雇用か、委任か、請負か。それぞれの違いを説明しよう。雇用契約では、被雇用者が使用者の指揮監督に従って仕事をする。働き方の自由度は低いが、労働基準法の適用を受けるため、労働者としての権利が保護される。

委任契約や請負契約は、他者の指揮監督を受けずに自分の裁量で仕事ができるが、労働基準法は適用されない。委任と請負の違いは、契約の目的だ。委任は業務の処理を目的とし、請負は仕事の完成を目的とする。前者は弁護士や医者、後者はプログラマーなどが代表例だ。

契約形態の違いは働き方の実態で決まる。たとえば書面で請負契約を結んでいても、実際は一般的な会社員と同じ働き方をしていれば、会社と雇用関係があったと判断されることがある。

「業務従事に対する許諾の自由がなかったり、勤務場所や時間を指定されていれば、雇用関係とみなされやすい。メンバーがどのような契約を結んでいるのか不明ですが、トラブルが起きて訴訟になれば、働き方の実態に即して判断されます」(同)

ちなみにAKB48のメンバーは最初から現在の芸能事務所に所属していたわけではない。当初はoffice 48という芸能事務所に全員が所属していたが、人気が出始めた2007年以降、メンバーの多くが他事務所に移籍。現在も研究生時代はAKSに所属し、売れてきたら他事務所に移る流れになっている。

スターの原石を育てあげたのに、他事務所に移籍させるのはもったいない気もするが、高橋弁護士は「移籍金が発生したり、活動に関してロイヤルティが発生する契約になっている可能性も否定はできません」と推測。

また雇用契約だった場合、会社はタレントを労働者として保護する必要がある。浮き沈みの激しい芸能界において同じタレントを長く抱えることは大きなリスクであり、移籍にはそのリスクを回避するメリットもある。

オーディションで安く仕入れ、育成して高値で手放し、グループの新陳代謝を促す。野球やサッカーには同じような経営方針を持つクラブもあるし、ビジネスでいえば早期退職制度で転職や独立を促すリクルートがこれに近い。そう考えると、AKB48は案外、理にかなったビジネスモデルなのかもしれない。

(ライヴ・アート=図版)