図は、世界の主要国38カ国の政府が持つ資産と負債のGDPに対する比率を示している。

「日本は借金漬け、財政破綻しそうだ」と財務省がいう根拠は、日本国民が毎年創出する付加価値であるGDPに比較して、国債残高が急増していることに基づく。確かに、図の◆で示す政府債務(GDP比)率は、ここに掲げた国で日本が際立って大きい。

しかし、企業や個人が借金しすぎるというとき、年収(厳密には異なるが国でいうGDP)だけに注目するであろうか。借金をするとき、バランスシート上は、債務を負っても同時に資産を持つということになる。図で示すとおり、日本政府は債務も大きいが、資産も大きい。

一方で、図の最も左に示すポルトガルは、資産も大きく保有しているが、債務が資産に比べてずば抜けて大きいので、GDPに比した債務の比率が高くなる。従って、確かにポルトガルは大債務国と言える。

財政の健全性は純資産で見る

日本は国債残高が大きいが、ポルトガルとは異なり、外貨などの金融資産を多く持ち、非金融資産、つまり公共の建物、港湾、道路、森林など実物資産も多く持つ。財務省は政府債務(GDP比)を比較して日本は破産寸前だというが、増税して権限を強くしたいがための詭弁と考えられる。

財政の健全性をより正確に測るには、政府の純資産(総資産から総負債を引いたもの)によって測られるべきなのである。図でいえば、日本の純資産はほとんどゼロであり、他国と比較しても健全と言える。

民間で例えて言えば、日本は多くのローンを借りて土地などの資産を多く持つお金持ちというにすぎず、「日本政府は破産寸前」とは言えない。「タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの」などと、矢野次官は日本の財政状況を例えたが、誇大妄想の限りである。

正しい理解で洗脳から目覚めよ

財政均衡論者からの反論として、実物資産(金融資産以外の資産)を考慮することに対しては、例えば道路公団は道路を売れないという批判を聞く。しかし、有料道路からは道路料金の収入があり、国債の金利の資金はそれでまかなえる。「日本の国債残高は世界最悪であるから、増税してプライマリー・バランスを均等化せよ」という財務省、財政均衡論者の主張は、前提が間違っているのである。

ところが財務省は、この誤った理解のもとに、国民や経済学者、エコノミストに対して、「政府も民間主体と同じように財政収支を絶えず均衡化せよ」という論理を当然として議論を進める。