それらネガティブな負債が残っている場合、いくら経済的資産を残しても、子どもや孫たちはあっという間にそれを失います。なぜなら、強力な「精神的負債」が受け継がれているからです。

逆に、「うちは貧しかったけど家族は幸せだったよ」という場合であれば、経済的資産はなくても、無形資産と感情的資産がたっぷり受け継がれています。

あなたは、どちらを残したいでしょうか?

経済的資産はもちろん大切ですが、より重要なのは精神的資産なのです。自分がいまどんな資産と負債を持ち、なにを引き継ごうとしているのか。これらの分類で整理することで、どうしたいかが見えてくると思います。

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お金を貯めるだけではNG

「経済的資産(負債)」だけでなく、「精神的資産(負債)」も、時代を超えて影響力を持つとお伝えしてきました。そうとらえると、わたしたちがなぜお金に翻弄されてしまうのか、その根本的理由が見えてきます。

もしあなたが、両親から「精神的資産(負債)」の影響を受けているなら、それはおそらくあなたが子どもだった頃に両親が描いた人生設計がベースになっているはずです。つまりあなたは、数十年前の考え方をベースにした「お金の設計図」にしたがって、知らず知らずのうちにいまを生きているのです。

そして、その両親も、あなたの祖父母から大きな影響を受けて育ったはずです。

祖父母の子ども時代はおそらく戦前~戦後間もない頃ですから、当時の日本はとても貧しく、恐慌や震災や戦争などにたびたび見舞われました。そんな時代には、当然ながらお金は慎重に使うべきものであり、多くの人は少しでも節約して、お金を貯めることに一生懸命になっていたことでしょう。

そうした欠乏感やお金を失う不安や恐怖感、お金を使うことに対する罪悪感などが世代を超えて、あなたの心のなかに脈々と受け継がれているともいえるのです。

時代に合った「お金の設計図」が必要だ

お金の設計図は、いわば心的イメージです。ふだんは表に出てくることはありませんが、いざお金の不安や怖れを感じたときに、突如頭のなかに姿を現します。

例えば、あなたはいまの仕事が嫌でたまらないとします。ただ、パンデミックを経た先の見えない時代に転職するには、時期が悪いようにも感じます。本当はそのタイミングで、情熱や好奇心にしたがって行動していたら、むしろいい結果が生まれたかもしれません。

でも、大切な決断のタイミングで、お金に対する精神的負債が急に頭をもたげてきて、「やっぱりいまはやめておこう」「給料がもらえるだけマシだ」「景気がよくなるまで我慢しよう」といって、新しい挑戦をあきらめてしまうわけです。

しかし、お金の設計図は、あなたの力で変えることができます。たとえ先祖から脈々と受け継がれた「精神的負債」があったとしても、それはあくまで設計図であり、人生という建物を「施工」するのはあなた自身だからです。