当面の生活は企業年金と遺族年金で
夫は60歳から企業年金を受け取っており、生きていれば現在66歳。すでに6年分を受け取っているので、企業年金を受け取れる期間は残り9年となる。田島さんは働くことも考えたが、当面の生活は企業年金と遺族年金で何とかなりそうなので、当時小学校高学年だった末っ子が高校生になるまでは家にいようと考えた。いまは家に近い医療系の施設で、週に1~2日受付業務を行い、パート収入を得ている。
子どもの進学に当たっては、夫が亡くなる前から奨学金を併用させるつもりだった。親にすべて甘えさせるのは、教育上よくないと考えたからだ。ところが、社会人になってから奨学金の返済に苦労する人が増えているという話を聞き、方針を変えた。
「いま手元にお金があるのなら、それを有効に使うことこそ、いい活かし方だと考えたのです」
長女が大学に進学する前に家族でそう話し合って決めた。夫が亡くなったのは、その直後だ。大学の付属高校に通っていた長女は内部進学することもできたが、よりレベルの高い大学を目指し、外部受験する予定だった。
「予備校の夏期講習に通っていた長女が急に『推薦で進学しようかな』と言い出したのです」
大学は本命、滑り止めと受験するだけでも相当な費用がかかる。予備校代も高額だ。「そんなお金を使うのはもったいない」と言うのだ。すでに内部進学の受け付けは終了していたので、残る道は指定校推薦しかなかったが、それまで一生懸命に勉強していた甲斐あって、すんなりと推薦を獲得。公立高校に通っていた次女も推薦でスムーズに進学した。
「実は主人が亡くなった際、子どもたちに最初に言ったのが『4人とも、ちゃんと大学までは出せるから。お金は心配しなくていいから』ということでした。『大学卒業後はひとりで生活できるような道を見つけなさい』ということも、もうそのときに伝えています」
夫の死は悲しい出来事だったが、子どもたちはお金の大切さや働くことの重要性を実感したようだ。
「就活中の長女は『パパがきちんとした会社で長く働いていてくれたおかげで、いまの私たちがあることがわかった』と言っています」
田島さん自身の老後は、遺族年金と自身が積み立てた個人年金を受給する見込みだ。夫の企業年金の受給終了後の生活に不安がないわけではないが、その頃には4人の子どもが全員立派に巣立っているに違いない。