▼PART 3●70代からの壁
認知症・免許証返納・老人ホーム入居
病気も介護も、申請漏れに注意
「5大破綻」のなかで、70代で起きやすいのが「医療・介護破綻」「アクシデント破綻」だ。体力や認知機能の衰えによって、これまでとは異なる壁が迫ってくる。
介護を受けたり、寝たきりになったりしないで、日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は、男性が72.14歳、女性が74.79歳(16年)。この年齢を境に、医療や介護を必要とする機会は増えてくる。ただし、公的な健康保険や介護保険を適切に使えば、医療・介護で生活が破綻することはまずない。
健康保険には医療費が家計に過度な負担を与えないように配慮した「高額療養費」という制度があり、患者が支払う自己負担額に上限が設けられている。1カ月の自己負担限度額は年齢や所得によって異なるが、70歳以上で年収約156万~370万円の人は、通院が個人単位で1万8000円(年14万4000円)、入院もした場合は世帯単位で5万7600円。介護保険にも、健康保険と同様に自己負担を抑える「高額介護サービス費」という制度がある。たとえば、課税所得が145万円未満で住民税が課税されている世帯なら、1カ月の限度額は3万7200円だ。いずれも、ある程度の貯蓄があれば払えない金額ではないはずだ。
「ただし、これらの制度は原則的に自分で申請しないと利用できません。対象者には、自治体から申請を促す通知が送られてきますが、見ないで捨ててしまう人がいます。医療・介護破綻の原因を探っていくと、実は高額療養費や高額介護サービス費などを申請していなかったというケースが多いのです」
藁にもすがる気持ちで、健康保険のきかない治療に大金を注ぎ込んでしまったり、介護保険の適用範囲外のサービスをたくさん受けて、家計が厳しくなってしまったりすることもある。なかでも、高齢期に注意したいのが介護サービスの過剰利用だ。
介護保険を使ってサービスを受ける場合、利用者はかかった費用の1~3割を自己負担すればよい。しかし、介護事業者が提供するサービスの中には、保険が適用されるものと適用されないものが混在しており、入浴支援や家事支援などは規定回数を超えて利用すると全額自己負担になる。
「気が付かずに利用していると、けっこうな負担になるので、ケアマネジャーに丸投げしないで、サービス内容と費用は自分でも確認する必要があります」
介護状態が進み、自宅での介護が難しくなった場合、施設への入所も視野に入ってくるが、特別養護老人ホームは狭き門。かといって有料老人ホームに入るには、1000万円単位の入居一時金に加えて、毎月の維持費もかかる。だが、認知症の高齢者が共同生活を送る「グループホーム」、デイサービスやショートステイを組み合わせた在宅サービスが受けられる「小規模多機能型居宅介護」など、比較的費用を抑えて介護サービスを受けられる施設もある。こうした施設情報は、中学校区にひとつある地域包括支援センター(包括)に行くと教えてもらえる。要介護認定の申請ができるほか、介護サービスの内容、認知症専門医などの紹介もしてくれるので、介護が必要になったら、まずは包括に相談してみよう。