電池性能の限界で、今のところ連続では12時間程度しか走行できないのも弱点だ。日本人の場合、車1台あたりの年間走行距離は平均で7000キロ弱しかないので、普通の使い方であれば問題はないはずだが、「万が一、長い旅に出たときに困るかもしれない」という心配があるうちは、一般ユーザーは買おうとしないのではないか。

もう一つの問題は充電施設などのインフラだ。インフラを整備しようにも、いまだに電池や充電装置などの統一規格が決まっていない。家庭用の電源も関西と関東で周波数が違うが、関東では充電できても関西ではできないということでは困ってしまうのだ。いずれにせよ、せめて2、3社から発売されてからでないと、実用性の点で評価を下すのは難しい。

エコカーという枠の中でもう一つ注目すべきはディーゼルエンジンだ。すでにヨーロッパでは一般的だが、車載用では最も熱効率が高い。メーカー各社はさらに効率を向上させるべく研究を続けており、いずれは現在のハイブリッド並みの燃費を実現するのではないか。そうなるとエコカーの中心となる可能性は高い。

最新のディーゼルエンジンは排ガスもクリーンだし、性能的にも優れている。2008年秋に日産がエクストレイルに採用したディーゼルエンジンなどはすばらしい出来で、パワー、スムーズさ、静粛性など、ダイムラーを凌駕する。また現在、トヨタも系列のいすゞ自動車とともに新型ディーゼルを開発している。

16歳で免許を取ったぼくも、09年には70歳になる。“最後の車”には国産のディーゼル車を、と考えているのだ。

仮に電気自動車が普及し、ガソリンエンジン車と入れ替わるとしたら、飛行機の世界でプロペラ機に替わってジェット機が登場したことに匹敵する、自動車誕生以来の大変革ということになる。

その場合、現在の自動車業界の枠組みは根本から変わってくる。パナソニック製のモーターがトヨタ車に載るかもしれないし、もしかすると、パナソニックが車そのものをつくる時代がやってくるかもしれない。ただそれはおそらく、だいぶ先の話になるだろう。

(久保田正志=構成 永井 浩=撮影)