「スマイルカーブ」の両端での勝負へ
デジタル化した部品や部品をある程度組み立てたモジュールを買ってくれば、誰でも薄型テレビやパソコンなどを組み立てられる時代になった。それを、人件費や土地代、税金、電力料金などが安い地域でつくれば、競争力もできる。だから、アジアなどの新興国が、「ものづくり」で世界の先頭を走っていた日本に並びかけ、抜き去っていく。
「ものづくり」の流れのなかで、そうした組み立ての領域は「中流」に位置し、日本勢が先頭にいた時代は、材料や部品などを送り出す「上流」や製品の保守など各種のサービスやソリューション(課題解決)のビジネスが広がる「下流」を上回る収益源だった。だが、技術革新の加速と新興国の台頭で「中流」の製品寿命は短くなり、利益も薄まった。いまや「上流」や「下流」で差別化を図るしか、利益は手にできない。そうした収益性を線で描くと、流れの中央が低く、上・下流の両端が高い曲線となり、笑顔の口元のような形から「スマイルカーブ」と呼ばれている(図表1)。
――電機業界を筆頭に、多くの産業が「スマイルカーブ」の状況です。
【中村】「中流」の代表的な製品である液晶テレビは、部品のモジュール化により必要な部品点数が大きく減り、かつては長々としていた組み立てラインも5、6メートルに縮小しました。それだけ、つくるのが容易になったわけで、新興国のメーカーも含めて激しい値下げ競争が続いています。一時は稼ぎ頭だった32インチ型は、店頭価格が大幅に下がり、パナソニックの独自技術のすり合わせでつくっている五枚刃の最新型ヒゲ剃りより安いほどです。そのヒゲ剃りは、快適に剃れ、剃った後の心地よさなど、他社では真似できない「アナログ」のノウハウでつくられています。そうした強みがブランド力につながり、「下流」に含まれる製品とも言えます。