舌がしびれる辛さがクセになる
マーラータンという食べ物を知っているだろうか。漢字では「麻辣湯」または「麻辣燙」と書く、辛い中華スープ麺のことだ。「麻(マー)」は花椒(ファージャオ)というスパイスを使った舌や唇がしびれる辛さ、「辣(ラー)」は唐辛子を使ったヒリヒリとした辛さで、「湯(タン)」(または燙)はスープを表す(燙は火傷するほど熱いスープという意味の中国語)。
俳優の石原さとみさん、仲里依紗さん、タレントの柏木由紀さん、韓国のアイドルグループのメンバーなどがインスタグラムやTikTokなどのSNSで「おいしい」と紹介したことがきっかけで、2024年の半ば頃から人気に火がついた。いま、東京都内に少なくとも50店舗以上あり、関東近郊や大阪、福岡などにも急速に専門店が拡大している。
チェーン店のほか中国人経営による個人店があり、顧客は10代後半~20代の若い女性が多く、有名店には開店と同時に行列ができるほどだ。マーラータンが若い女性を惹きつける理由は何なのだろうか。
開店前から10人以上の行列が…
筆者が初めてマーラータンを食べたのは24年の年末。池袋にある中国発のチェーン店「楊国福麻辣燙」(ヤングオフーマーラータン)池袋店だ。その半年ほど前からSNSで頻繁に名前を見かけるようになり、一度食べてみたいと思っていた。中国では20年ほど前から専門店が増え始めたようだが、筆者は中国では食べた経験がなかった。どの店に食べに行こうかと考えていたとき、中国に本店があり、18年に日本に進出、世界各国で約7000店舗を展開する同店が思い浮かんだ。
開店時間の午前11時を少し過ぎた頃に店の前に行くと、すでに15人ほど並んでいて驚いた。前方にいる顔ぶれを見ると、8~9割は20歳前後の若い日本人女性のようだ。外にある看板には、まず好きな具材をボールに取って計量し、レジでスープや麺の種類を選ぶという手順が書いてある。どのくらいの量を取ったらいいのかわからなかったが、前に並んでいた女性が手慣れている様子だったので、その分量を横目で見つつ、野菜や肉、練り物、キノコなどを取ってみた。