歌舞伎町ではびこる「マネロン」

繁華街は組織犯罪における資金獲得の場である一方、得られた犯罪収益をマネーロンダリング(資金洗浄)する場として使われるケースもある。

マネーロンダリングとは、犯罪収益の出所を隠して、それを合法的なものに見せかける一連のプロセスのことを指す。日本においては犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)で規定されており、不法収益を隠すために資金を移動させる行為、犯罪による収益を合法的な資金であると偽る行為、不法収益の所在を隠す行為などが禁止されている。

当然ながら、マネーロンダリングが広がれば、国の金融システムや経済の透明性が損なわれるうえ、組織犯罪やテロ活動の資金源ともなるので、国際的にも厳しい取り締まりの対象となっている。

現金が飛び交う歌舞伎町はマネロンに好都合

では、繁華街におけるマネーロンダリングとは、一体どういうものか。

最も分かりやすい事例としては、キャバクラやホストクラブなど接客を伴う飲食店を通じたものが挙げられる。犯罪収益をキャバクラやホストクラブの売り上げとして計上し、その後、合法的な事業収益のように見せかけるやり方である。

具体的には、架空の顧客を作って、実際には利用されていない高額なサービス料金を売り上げとして計上したり、より直接的には、組織のメンバー自身が「顧客」として店で大金を使ったりすることで、犯罪収益を店の正規の売り上げとする方法である。

会計
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こういったやり方が可能なのは、キャバクラやホストクラブなどの水商売業界においては、今でも現金取引が多いためである。顧客側の支払いだけではなく、従業員への給与、酒屋からの仕入れなども、現金で直接やり取りするケースは多い。

また、キャバクラやホストクラブは、普段から高額なシャンパンやボトルが飛び交っている場だ。特に歌舞伎町は、一人の顧客が一度に1000万円を支払ったとしても、それほど違和感を覚えられることがないような、およそ一般的な感覚とは異なる世界でもある。そこに特殊詐欺や強盗によって得た大量の現金を持ち込んだとしても、たしかに目立つことはない。

そこで、組織犯罪グループの一部は、キャバクラやホストクラブの実質的なオーナーとして店を運営したり、関係性の深い店を介させたりすることで、犯罪収益をマネーロンダリングする流れを作る。