「還付申告」は5年を遡ってもOK
給与所得者の場合、すでに年末調整で税金を払っているので、確定申告で「医療費控除」をすると、すでに払っているお金から、払い過ぎの税金を戻してもらう「還付申告」になります。
この場合は、5年を遡って申告し、税金を戻してもらうことができます。
たとえば、今年20万円ほど「医療費控除」で戻してもらうお金があるけれど、医療費を整理しているうちに、3年前に入院した時に自己負担した30万円の領収書が出てきたとします。この30万円も、確定申告で請求することができるということです。
ただし、この30万円は、今年の20万円に加えて50万円で合算請求することはできません。今年のぶんは今年のぶん、3年前のぶんは3年前のぶんと、別々の請求になります。
また、入院した際の支払は自腹を切っても、あとから高額療養費制度でお金が戻ってきたり、保険会社から保険がおりたりしたら、そのぶんは差し引いて申告しなくてはなりません。
ちなみに、「ガスター10」などの「スイッチOTC医薬品(※)」は、医療費控除の特例の「セルフメディケーション税制」といって、年間の薬の購入額が1万2000円を超えると、超えたぶんの額が控除の対象となります。
ただし、「セルフメディケーション税制」と通常の「医療費控除」は、併用できないので、どちらを申告するか選択しなければなりません。
※医療用医薬品から市販薬にスイッチ(転用)した医薬品で、薬局・薬店・ドラッグストアなどで医師の処方箋なしに購入できるもの

いずれにしても、医療費控除は、会社の年末調整では行われませんので、病院でもらう領収書や薬局で購入した医薬品の領収書はきちんと保管して、10万円を超えたなら申告するとよいでしょう。家族がいる人なら、全員がその意識を持ち、1年に1回、所得のもっとも高い人が「全員分をまとめて」還付申告をするようにしましょう。
何度も言いますが、還付金は自分で動かない限り戻ってきません。そのことをしっかりと頭に入れておきましょう。
1954年、長野県生まれ。経済ジャーナリストとして新聞・雑誌などに執筆するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとして幅広く活躍。難しい経済と複雑なお金の仕組みを生活に即した身近な視点からわかりやすく解説することで定評がある。「中流以上でも破綻する危ない家計」に警鐘を鳴らした著書『隠れ貧困』(朝日新書)はベストセラーに。『知らないと一生バカを見る マイナカードの大問題』(宝島社新書)、『5キロ痩せたら100万円』『65歳からはお金の心配をやめなさい』(ともにPHP新書)、『年金だけで十分暮らせます』(PHP文庫)など著書多数。