いかに大胆になれるか

③各要素の推定量を決定

いよいよ各要素の推定量を決定していきます。ポイントは「いかに大胆になれるか」です。

今回の例題では次のように考えました。

・読書習慣がある人の割合

活字離れが言われて久しいものの、「読書」の対象を、学習参考書、写真集、雑誌、コミックなどにまで広げれば、子どもからご年配まで読書習慣のある人はまだまだいます(そう信じたいです)。そこで読書習慣のある人の割合は70%にします。

・書籍1冊あたりの平均売値

週刊誌なら400~500円、単行本なら1,500円前後と、これもかなり開きがありますが、ここは大胆に書籍1冊あたりの平均売値は1,000円ということにします(迷ったらできるだけ計算しやすい数字にしてください)。

・読書習慣がある人1人あたりの年間購読冊数

毎週決まった雑誌を買う人もいれば、1年に1~2冊という人もいるでしょう。また好きなコミックが出れば必ず買うという人も少なくありません。そこで読書習慣がある人1人あたりの購読冊数は月に1~2冊、年間では20冊ということにします。

④計算

①で作ったモデルの式に、②と③の値を代入して計算します。

日本の年間書籍売上
=日本の人口×読書習慣がある人の割合×書籍1冊あたりの平均売値×読書習慣がある人1人あたりの年間購読冊数
=12,000万(人)×70(%)×1,000(円)×20(冊)=16,800億(円)
本でいっぱいの図書館の棚
写真=iStock.com/Stockyme
※写真はイメージです

結果を検証する

⑤結果の検証

フェルミ推定によって値が出たら、検証をしてみましょう。特に公式の統計資料などが調べられるときには、自分の推定値と実際の値の誤差がどれくらいかを調べることで、誤差が小さければ(桁違いでなければ)、良い推定ができた、と自信がもてます。逆に誤差が大きかったとしても、推定方法のブラッシュアップができますし、思いもよらない事実の発見に繋がるかもしれません。

ちなみに、公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所が発表した出版市場調査によると、2023年の紙+電子の出版物の推定販売金額は15,963億円(1兆5963億円)です。推定値は16,800億円でしたから、今回は良い推定になりました。