肩書がなくなったときどう生きるか

それは雇われている医師とて同じことです。

私の大学の同窓生のなかには、医学部教授や大病院の病院長になった友人たちがいます。彼らも定年が迫ってきて、「この先どうしようか……」とよくぼやいています。開業すれば自分で自分の定年を決められますが、勤務医だとそうはいかないのです。

そんな姿を見るにつれ、肩書がなくなったとき、どう生きるかを早いうちから考えておくのが賢明だと感じさせられます。

定年を迎えて会社を追われてからあわてて考えるのではなく、第二の人生に向けた準備を始め、次に何をするのかを自分なりに計画しておくことが重要です。

高齢者らしい方法で長く続けられる仕事を見つけ、楽しみながら働くこと。そんな「定年後の働き方改革」は、今後ますます重要になっていくことでしょう。

老後に確実に訪れる3つの身体変化

どんなに元気で健康な人でも、加齢にともなう体や心の変化は避けられません。気持ちのあり方や意志の強さだけではどうにもならない身体的な変化が確実に訪れます。

とくに注意すべき「三大伏兵」として知られているのが、「①前頭葉の萎縮」「②ホルモンバランスの変化」「③セロトニンの減少」です。これらを理解して対策を立てることが、老化のスピードを緩やかにするカギとなります。

1 前頭葉の萎縮と意欲の低下

まず、脳の老化の一環として前頭葉の萎縮が挙げられます。

脳のなかでもっとも早く老化が進むのは、記憶を司る海馬ではなく、意欲や創造性をコントロールする前頭葉です。この前頭葉の萎縮が見られるようになるのは40代頃からで、ここから脳のほかの部分の老化が加速していきます。

人間の脳
写真=iStock.com/eli_asenova
※写真はイメージです

前頭葉が萎縮すると、物事に対する意欲が低下し、日々の生活に活力を見出しにくくなります。何をしても楽しめない、気力が湧かないと感じるのは、前頭葉の老化が原因であるケースが多いのです。

この意欲低下に対処するには、脳を常に活性化させ、前頭葉の機能を維持することです。

新しいスキルの習得、知的な活動、社会的なつながりを持つことなどが、前頭葉の萎縮を遅らせる助けとなります。つまり「働くこと」はうってつけといえます。