レスポンス能力は勝手に身に付く

細やかなレスポンス。これも10代~20代の私にはしんどかった。周りの友人がレスポンスし合うのが当たり前の人たちで、自分は気持ちが乗ってない時にうまく反応することができなくて、周りのレスポンスの速さについていけなくて居心地が悪いと感じた時期もありました。

中年になると友人達のレスポンス能力はさらに爆上がりしていて、私もいつの間にか追いついていました。みんなで旅行に行った時は誰かが「腰が痛い」と言ったら漢方の話を始める人、横になれと言って背中に乗っかってマッサージを始める人、私もそこに交ざり100円ショップで買って持ってきたグリグリ指圧棒をスーツケースから出して貸してあげていたのです。

若い頃の私に言いたいのは、焦らなくてもレスポンス能力は勝手に身に付く、ということです。

私はまだ60代、80代の人が行う「年齢自虐」には気恥ずかしくて交ざれないけど、口を大きく横にひろげて歯を見せる笑顔もレスポンスの一つであり、その場をほぐす効果があるので、全力で笑顔になっています。

若い時はこうして年上たちに見守られていた

若い時は、人からレスポンスされてもそれを愛として受け取ることをまだ知らないから「無」ってなって終わってしまうものです。私もずっとそうやって過ごしていました。ぜんぜんOKです。そんなこと知らないもん、若い時って。

私も若い時、こうやって年上たちに見守られ、許されていたんだなあ、ありがたいなあって心から思います。

深く考えずに通い始めた卓球ですが、80代のおじいちゃんやおばあちゃん、一見フラフラに見えるのに、練習試合すると上手くて勝てない時がある。

「私は40代だからさすがにちゃんと練習したら強くなれるんじゃないか⁈」と思って試合に出るためにがんばりたいと思うようになりました。

私も80歳になった時、仕事と家事育児で時間なさすぎて運動不足でドテドテしている40代の人と対戦して「もっと強くなりたい! 卓球続ける!」と思わせられる高齢者になりたいです。

もしかしたら、実際に自分が80歳になったら、この件に関してまた別の予想もしない感情が生まれそうな気もします。でも今は、このハートウォーミングな感覚を楽しもうと思います。

田房 永子(たぶさ・えいこ)
漫画家

1978年東京都生まれ。2001年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞(青林工藝舎)。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行、ベストセラーとなる。ほかの主な著書に『キレる私をやめたい』(竹書房)、『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(河出書房新社)、『しんどい母から逃げる!!』(小学館)などがある。