経済同友会提言「第3号被保険者制度の廃止は必須」

さらに経済同友会も12月2日、第3号被保険者制度の廃止を訴える提言を発表した(現役世代の働く意欲を高め、将来の安心に備える年金制度の構築)。年収の壁対策として政府が推進している主婦パートなどの社会保険加入の適用拡大は「一度に全ての被用者への適用拡大は困難である」と指摘。「根本的な問題解決のため、専業主婦や短時間労働者の方が得であるというインセンティブが働き、女性の就労やキャリア形成を阻害するとともに男女間の賃金格差を生む要因になっている。『第3号被保険者制度』の廃止が必須となる」と述べる。

現在、専業主婦など保険料の負担なしに基礎年金を受け取る第3号被保険者の保険料は会社員などの第2号被保険者全体の保険料で負担している。しかし単身世帯との比較では、保険料の負担は同額であっても片働き世帯は2人分の基礎年金が給付される。また、基礎年金のみを受け取る自営業者は夫だけではなく妻も保険料を支払っていることを例示。その上で「夫の職業によって妻の保険料負担の有無が決まるという点では、被保険者間の公平性が担保できているとは言い難い」と指摘する。

子育てや障がい等により就労困難な場合は免除も

そして廃止までに5年の猶予期間を設定し、以下の工程表も示している。

① 初年度から第3号被保険者の新たな加入・適用を行わない
② 猶予期間中に第3号被保険者は第2号または第1号被保険者への移行を促し、完全移行する
③ 育児期間中の世帯で子どもが1歳になるまでの期間を除き、移行時の世帯年収が一定金額以上の場合、5年が経過して以降、第1号被保険者となった第3号被保険者は保険料を負担する。

ちなみに国民年金受給者の第1号被保険者の保険料は月額1万6980円である。所得が低い世帯への救済策として「第1号被保険者に移行した者が、移行時の世帯年収が一定金額未満で、かつ子育てや障がい等により就労困難な場合は保険料の減免措置を設ける」ことを提案している。

将来的に廃止すべきという意見が出されているが、最後は政治の決断である。第3号被保険者制度の廃止を打ち出すと、選挙に影響するため、従来の政権はこれまで避けてきた経緯もある。今回は先送りされたが、時代の変化とともに廃止への流れが進むことは避けられないだろう。時間の問題だ。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。