育児・介護で働きたくても働けない人への配慮は必要
第3号被保険者は、130万円未満で就業調整をしている人ばかりではない。約735万人のうち、パートなどの会社員・公務員が約312万人だが、働いていない専業主婦など非就業者が約326万人も存在する(2022年公的年金加入状況等調査)。その中には介護等の事情で働きたくても働けない人もいる。そうした人たちが無年金状態にならない配慮も必要になる。
商工会議所が踏み込んだ提言を発表
また、中小企業の経済団体である日本商工会議所と東京商工会議所は、「年金制度改革に関する提言」(2024年11月21日)を発表している。この中で「第3号被保険者制度の解消に向けた検討」を掲げ、第3号被保険者制度は「性別や婚姻の有無にかかわらず、男女ともに働いて収入を得ることが一般化したという環境変化を受け、同制度が果たしてきた役割は、終焉が見通せる状況になりつつある」とまで言い切る。
提言では、第3号被保険者が「年収の壁」を意識して働く人が多いと指摘し、数値を示して説明している。前述したように第3号被保険者約735万人のうち、パート主婦などの短時間労働者が約312万人いると述べた。そのうち手取り収入の減少を避けるため「年収の壁」を意識して働いていると想定される人である月収7.8万円~10.8万円は約147万人いると推計している。
その上で提言では「『年収の壁』問題の根底にある第3号被保険者制度の将来的(10年~20年後など)な解消について、早急に国民の合意を得る努力をすべきである」と強調。一方で働ける環境にない人の実状には配慮すべきとも述べている。以前は社会保険料負担を重荷に感じる中小企業も多かったが、やはり人手不足が深刻ということだろう。日本商工会議所が第3号被保険者制度の廃止に舵を切ったことは興味深い。