やりたい仕事「だけ」ができるわけではない
最近は「好きなことを仕事にしよう」という風潮も強いですが、その「好きな仕事」に幻想を抱いてしまうことも、原因の一つになっていると感じます。「好きな仕事」の魅力的な面ばかりに目が行って、それに付随する地味なところや自分が魅力を感じない部分に、目が行かなくなってしまうのです。
例えば一見華やかに見えるYouTuberの仕事も、実際は動画に出ている時以外に、下準備やデータ分析などの大変な作業がたくさんあります。営業も、人と接するという営業活動以外にも、関連する準備や事務作業などの仕事は数多くあります。そのために、たとえ「好きな仕事」に就いたとしても、今まで見えていなかったこうした作業のために仕事への意欲や熱意が下がってしまい、離職してしまうのです。
成長実感が持てない
3点目は、「この会社にいても、自分が成長しているかどうかがわからない」と、成長の実感が持てないことを理由に離職するケースです。
最近は「人生100年時代」といわれ、定年の年齢も上がっています。いつまで働かなくてはいけないのかわからず、先が見えにくくなり、不安を抱える人が増えています。また、「AIに仕事を取られる」「国際競争が激化する」などといわれており、特に若手は不安感を強くしています。さらに、SNSなどで同年代の人が活躍している姿を目にすることも多く、自分の現状と比べてあせりを感じたり、不安になったりしやすいのです。
そして、こうした不安を背景に、会社に対して「どれだけ自分を成長させてくれるのか」を求めてしまうのです。しかし、会社は一個人の成長のためだけに存在しているわけではありませんし、自分の成長というのはそう簡単に自分で実感できるものではありません。前述のようなあせりや不安、「成長機会や成長実感を与えてほしい」という会社への過度な期待とのギャップから、離職を考えてしまうわけです。
「理想の職場」は存在するのか
ただ、こうした理由で今の会社を辞めたとしても、今後、理想の職場に出合えるかどうかはわかりません。
転職エージェントなどは、CMなどでさかんに「今よりも、もっとあなたにぴったりな会社を探しましょう」と、不安やあせりを抱える若者の転職を誘います。そして、こうした誘い文句にあおられて、「今働いている会社以外に、もっと自分に合った会社があるかもしれない」と、“青い鳥”を探して転職サイトに登録してしまうわけです。ある意味、周りに踊らされてしまっているところがあるといえます。しかし、同世代の友人たちは、なかなかそれを指摘したりしないでしょうし、上の世代の人が指摘したとしても、耳に入らないかもしれません。