部下の家族と信頼関係を構築する

また、離職を考える際、まず相談するのが家族です。

この世代になると結婚して、家庭を持っている人も多く、その場合、家族の同意なしに離職することは難しいものです。そして、家族の一言が離職の抑止力になることも少なくありません。

そのため、部下の家族と信頼関係を構築することも重要になります。

ある不動産会社では、社長が社員の家族に手紙を送っています。

その内容は、社員の活躍ぶりと、その社員を日頃から支えてくれている家族の方への感謝の言葉です。それを社長が一通一通、直筆で心を込めて書いています。

結果としてそれは社員本人との関係を深めることにもなっています。

藤田耕司『離職防止の教科書 いま部下が辞めたらヤバいかも…と一度でも思ったら読む 人手不足対策の決定版』(東洋経済新報社)
藤田耕司『離職防止の教科書 いま部下が辞めたらヤバいかも…と一度でも思ったら読む 人手不足対策の決定版』(東洋経済新報社)

それによって、離職者がずいぶん減ったと話されます。

また、ある建設会社では、社員の家族も呼ぶ、社員の慰労会を行っています。そこで支店長が社員のご家族に対して、日頃のお礼と感謝を伝えて回っています。

このように部下の家族とも信頼関係を構築することは、部下の離職を防ぐうえでも、とても大切な関わりです。

「将来の不安が見えてくる世代」「離職の抑止力となる部下との絆、上司との絆」「家族の理解も離職の抑止力となる」の項目でお伝えした内容は、すべての中間世代、年長世代にあてはまることですが、とりわけこのカテゴリーの人に当てはまる要素が強いので、ここでお伝えしました。

藤田 耕司(ふじた・こうじ)
経営心理士、公認会計士

1978年徳島県生まれ。早稲田大学商学部卒業。2004年、有限責任監査法人トーマツに入社。2011年に同社を退社。2012年、藤田公認会計士税理士事務所(現FSG税理士事務所)を創設。2013年、経営と心理と会計のコンサルティングを行うFSGマネジメント株式会社を設立、代表取締役に就任。2015年、一般社団法人日本経営心理士協会を設立し、代表理事に就任。著書に『リーダーのための経営心理学』(日本経済新聞出版社)、『経営参謀としての士業戦略』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。