お酒を控えるための万能漢方薬はありません
僕の漢方相談でも、飲酒に関するお悩みは多いです。みなさん「お酒はやめられない」とおっしゃいます。けれど、お酒を控える、量を減らす、という本人の行動以外で解決するような万能な漢方薬は、この世にはありません。「不調をなんとかしたい」とおいでになっているわけですが、その不調もその悩みも、作り出したのはその人自身です。
これまで送ってきた生活であったり、摂取してきた飲食物だったりが、今の不調を作り出している。それを変えたいと思うのであれば、その習慣を見直すしかありません。……と、実は、飲酒に関するお悩みには、厳しめにアドバイスをしています。そのうえで、飲酒量だけではなく、食事面も含んだいろいろな提案をして、できることから始めることをおすすめします。
まず、アルコール以前に、冷たいものの飲みすぎがよくないので、例えば氷たっぷりのハイボールを毎晩飲んでいるならば、まず氷は抜きましょう、と。それに慣れてきたら、量を少しずつ減らす、おつまみに冷や奴や刺身はやめて、温かい煮物などに替える、というように順を追って、です。
以前、めまいに悩む患者さんがいましたが、話を伺うと毎日の飲酒量がものすごい。体内の水分指標の目安である舌苔もべっとりと分厚くて、明らかに摂取している水分量が多いのですね。水を吐き出す作用のある漢方薬も併用しながら、とにかく飲酒量を減らすように努力を促し、2年かかりましたが、ようやくめまいはなくなりました。
「え〜ビールを毎日飲みたい!」って? いいんですよ、飲んでも。僕も嗜む程度に飲む日はあります。でも、空きっ腹にキンキンに冷えたアルコールが臓器にどれだけ大きな負担をかけているかも、認識しておいてほしいのです。
実は僕も昔から、眠る前につい考え事をするなどして寝つきが悪く、寝るためにこれまで本当に多くのことを試してきました。その中で、穏やかな音楽や、もう何度も聞いて内容もオチも知っているバラエティ番組の音声を流して眠るのが、自分がリラックスできてスムーズに眠りに入れると気づきました。それ以来、1時間ほどタイマーをかけて、音声を聞きながら眠るのが習慣です。何が合うかは人それぞれですから、お酒以外の方法も模索してみてください。
国際中医専門員、日本中医薬研究会会員。漢方薬局の三代目として生まれ育つ。カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後はイスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国の首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格を取得。 これまで年間数千件の健康相談を受け、のべ4万件以上の悩みに応えてきた。相談者の話をじっくり聞き、不調の根本的な理由を探し、相談者の体質やライフスタイルに合わせたアドバイスをしている。Xで発信されるやさしいメッセージと、簡単で実践しやすい養生法も人気を集め、フォロワー数は18万人を超える。