不器用な「ごめんなさい」にイラッとしたら…

それでは、人から謝られる技術について具体的に学んでいきましょう。

「ごめんなさい」を言われる立場になったときに心得ておきたい大前提は、相手の謝り方は十中八九、かなり下手ということです。

言い方が雑だったり、言い訳や反論が多かったり、「そっちこそ謝るべき」と言ってきたり、顔がこわかったり、逆ギレしてきたり……。謝ることに技術があるのを知っているあなたからすると、「そんな『ごめんなさい』はダメだ!」と一刀両断したくなるような謝り方だと思います。

そんなふうに相手の不器用な「ごめんなさい」にイラッとしたときは、この対話のそもそもの目的を思い出してみてください。

そう、「ごめんなさい」をきっかけにした対話の目的は、相手との関係をより深めていくことでした。そのために、「ごめんなさい」の技術をまだ知らない相手を、あなたが少しだけリードしてあげていただけないでしょうか。私からのお願いです(笑)。

 

6ステップの人から謝られる技術

ただし、「これからも関係を続けていきたい」と思う人にだけで大丈夫です。あなたにとって大切な人だからこそ、ここまでやるわけです。

「この関係は切れてもいい」「そこまで大切な人ではない」という人には、「ああ、そういう人なのね」と思って、そっと、その場をあとにする……。

林健太郎『「ごめんなさい」の練習』(PHP研究所)
林健太郎『「ごめんなさい」の練習』(PHP研究所)

というのは言いすぎかもしれませんが、「そう感じたんだね」といった中立的な承認の言葉を伝えつつ、「少し考えさせてほしいから、また話そう」といった言いまわしで間接的に話を打ち切る意向を伝えてもいいかもしれません。

こういったタイミングは人間関係を整理する絶好のチャンスです。

「これからも本当に、この人との関係を続けていきたいか」を自問してみてください。

人から謝られる技術には、次の6つのステップがあります。

ステップ1 承認のひと言を伝える
ステップ2 「この話をしたい」と提案する
ステップ3 不快感を伝える
ステップ4 相手のフルストーリーを聞く
ステップ5 許可を得てから思いを伝える
ステップ6 最後の確認をする

本書で学んだ「ごめんなさい」を伝える技術には全部で7つのステップがありましたが、今回の人から謝られる技術は、それより1ステップ少なくなっています。

ですが、油断大敵です。

「ごめんなさい」を伝える技術と比べて心理的負担は半分ですが、包容力は2倍必要と見積もっておくといいかもしれません。

林 健太郎(はやし・けんたろう)
否定しない専門家/コーチ

2 万人以上を指導したコーチ。リーダー育成家。ナンバーツーエグゼクティブ・コーチ。一般社団法人国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。1973年、東京都生まれ。バンダイ、NTTコミュニケーションズなどに勤務後、エグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏との出会いを契機に、プロコーチを目指して海外修行に出る。帰国後、2010年にコーチとして独立。これまでに大手企業などで2万人以上のリーダーに指導してきた。否定しないコミュニケーション術をまとめた『否定しない習慣』(フォレスト出版)が14万部を超えるベストセラーになる。このほか『できる上司は会話が9割』『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』『できるリーダーになれる人は、どっち?』(いずれも三笠書房)、『いまを抜け出す「すごい問いかけ」』(青春出版社)など著書多数。