我ながら感情的な文面だが、とても冷静ではいられず、強い言葉をメールに書き連ねた。その後、A男の代の男子部員の保護者たちからぽつりぽつりと返信が来たが、どれも事務的な回答なことに再びショックを受けた。

「A男くんが盗撮したのは知っているけれど、わが子は画像を見ていないと言っています」

「画像を見ていないし、持ってもいないと言っておりました」

「盗撮があったことだけは知っていましたが、わが子は関わっておりません」

それを踏まえて理沙や他の盗撮被害者とも相談し、今度は学校を通じて「部員1人1人が謝罪文を提出すること」を要求したが、A男の学年の男子部員からは1人も謝罪がなかった。

「訴えるなら訴えろ」と逆ギレ、「誓約書」を要求する親も…

それどころか、ある男子部員の父親は筆者に電話をしてきて「訴えるなら訴えろ」と恫喝した。また、ある母親は切手を貼付した返信用封筒と共に「この件は一切口外しません。また、今後一切この件で連絡はいたしません」と書いた「誓約書」なる書面にサインして返送しろと要求してきたのだ。

これには筆者も理沙も憤ったが、盗撮被害にあった他の女子部員たちが戦うことを望まなかったこともあり、追及はうやむやになった。後輩の部員にとってはA男は同級生であり、高校を卒業して新しい生活が始まるタイミングだということも影響したのだろう。

結局、3月に学校が開催した「説明会」を最後に、盗撮事件については「終わり」にすることになってしまった。

この一件で得たものは何か。盗撮に加担した男子部員や娘以外の被害女子部員とのやりとりには膨大な時間がかかり、精神的にも大いに疲弊した。家庭内でも、女性のデリケートな話題だからという理由で事態に関与しようとしない夫にも苛立ちが募った。

理沙はその後なんとか大学受験に成功し、今では社会人として新たな生活を始めている。それでも春頃までは盗撮をした男子部員たちのSNSをついチェックしてしまい、のん気に過ごしている姿に怒りを覚えることもあった。今でも時折、心の中で彼らに呪詛の言葉をかけてしまうことがある。

加害者たちが反省したかはわからない。それでも卒業間近に学校から呼び出され、保護者から聞き取りされた「事の重大さ」と「怖さ」だけは少しでも心の中に残っていて欲しい。

一方、戦ったことによって、盗撮をした男子部員たちが処罰を受けたわけではなく、理沙や他の女子部員は何も得ることはなかった。事件と正面から向き合ったことでむしろ傷ついたこともあった。

しかし、共に戦ったことで母娘の絆は強まったし、理沙にとって「何でも相談できる相手」「信頼できる相手」と認識されるようになったことだけは良かったと心の底から言える。

結果には全く納得していないが、泣き寝入りせずやれることはやったという自負は、娘が心の傷を乗り越えていく力になっているのではないか。今はそれだけを信じたいと思う。

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