〈体育座りができない、公園に連れて行っても遊べない…石井光太が危惧する《“当たり前のこと”ができない子どもたち》〉から続く
「ホモサピエンスの成育環境で育たない子どもは一体どうなるのか。その恐怖と不安が、本書の取材をはじめたきっかけです」…スマホ育児や親世代の多忙、保育士たちの質の変化によって、今「当たり前のことができない子どもたち」が増えている。子どもたちを取り巻く危険な状況を『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』(新潮社)を上梓したジャーナリストの石井光太氏に教えてもらった。(全2回の2回目/前編を読む)
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カーブを回れず転んでしまう子どもたち
――本では、未就学児だけでなく、小学校、中学校、高校と4つに分けて、それぞれの世代で起こっていることが詳しく説明されています。やはり、幼い頃の問題が、小中高にも繰り越されているのでしょうか。
石井光太(以下、石井) それは確実に言えると思います。たとえば、小学校の先生方が挙げていた子どもたちの変化として次のようなものがありました。
・100メートル走でカーブを走って回ることができずに転んでしまう子が続出する
・準備体操で両手を上げてバンザイの姿勢をとれない。肩や脇が固まっているため
・体幹が弱く、四つ這いになって雑巾がけをすることができない
・全身を使ってボールを投げられないので、男子も8割が「女の子投げ」になる
こうしたことは、明らかに幼い頃の問題の延長線で起きていることでしょう。本書では、骨折率の増加、視力の低下など様々なデータを示していますが、それらも同じです。
「友達の家を見たことがない子ども」が急増
――小中学生は、学校以外で友達と会うことが少ないので、人を一面的にしか見られなかったり、一面的な付き合いだけをしたりするようになっているという先生の声も紹介されています。
石井 今の子は、電子機器で管理されて下校で寄り道もしませんし、放課後に遊ぶといっても各々の家にいてオンラインゲームで遊ぶのがメインです。象徴的なのが、「友達の家を見たことがない子ども」の急増です。
友達の家って、未知の世界を知ることですし、友達の別の側面を知ることなんです。学校ではイケてなくても、家に習い事の表彰状がたくさん飾られていれば、「こんな面があったのか」と感心しますよね。それが多面的に人を理解するということです。
しかし、特にコロナ禍以降は人の家に行くことがなくなった。先生方が懸念していたのは、それゆえ子どもたちが一面だけで友達を決めつけたり、批判したりするようになりつつある点です。教室での一つの失敗で「キモ」「ウザッ」と人格を否定するような発言をする、話が苦手なだけで「陰キャ」と決めつける……。
別の先生は「今の子は一面だけで付き合うので、<薄氷を踏む>ような人間関係になっている」と話していましたが、その通りだと思います。そして、それに耐えられない子たちが、学校からドロップアウトしていく。
――中高生になると、SNSでその人のプロフと写真だけ見て、ネット上で告白して付き合うみたいなことが普通に起きているとか。