兄弟ともに麻薬の売買、暴行、窃盗、恐喝などで逮捕歴アリ
ところが司法警察員がモハメッドとともに裁判所に到着すると、大家族(モハメッドとイブラヒムの家族)のメンバーが約10人、裁判所の前に集まっていました。裁判所が呼んだわけでもないのに家族が10人もそこに集まっていたこと、かつ彼らがアグレッシブな態度で目立っていたことから、司法警察員は「家族がモハメッドを暴力的な手段で解放しようとしているのではないか」と危機感を抱きます。何せ前日に弟イブラヒムが兄を解放しようとパトカーのドアを勝手に開けたという悪しき前例があるのです。不安を感じた司法警察員は応援を呼び、7人の刑務官が駆けつけました。
この日、女性裁判官はモハメッドに再犯の恐れがあるとして保釈を却下。女性裁判官、日記方、司法警察員、手錠をしたままのモハメッドとその弁護士が同じ部屋にいる中、モハメッドは「弁護士と二人だけで話をしたい」と言い、許可されました。弁護士とモハメッドは裁判所の廊下の窓の横で話をし始めます。その時です。信じられないことにモハメッドは手錠を右手から外すことに成功、勝手に裁判所の窓を開け、窓から逃亡。本(※3)によると、モハメッドが手錠を外し窓の外に出るまで「あっという間」だったとのこと。
モハメッドは裁判所の窓から逃げようとして7階から転落した
隣にいた弁護士、そして廊下の少し離れたところにいた関係者たちは慌てました。スポーツが得意で身体能力の高いモハメッドは手足を広げ、しばらくは隣接する建物の壁との間でバランスを取っていましたが、途中でバランスを崩し転落。前述通り裁判所の7階にいたため、7階の高さから転落したということになります。
司法警察員らの間で大騒ぎになり、救急車が呼ばれました。裁判所の前に集まっていた大家族らの耳にもモハメッドの転落のことが伝わり、現場に来ていた容疑者の母親カドラ(Khadra S.)が「息子モハメッドはドイツの警察に窓から突き落とされた!」と叫びます。彼がドイツの警察に窓から突き落とされた事実はありません。つまりデマであるわけですが、困ったことに瞬く間にこの間違った情報が大家族の間で広がってしまい、大家族は「ドイツの警察」に対して怒りを爆発させました。