強盗事件を起こし、裁判所の窓から逃亡しようとしたモハメッド
これらの「大家族」による犯罪は数が多く、一つひとつ挙げていくとキリがないので、ここではドイツの街に「激震が走った2日間」について取り上げることにします。ことは数年前にドイツ北部の街ハーメルンで起きました。ここでは大ファミリーの名前をSとします。
ある男がハーメルンから11キロ離れたエルツェン(Aerzen)という村のガソリンスタンドに現れ、「金を出せ」とレジの人を威嚇。男はガソリンスタンドから現金とタバコを奪い、車で逃走。通報を受け、警察は2時間後にゲーム・センターにいた20代のモハメッド(Mohamed S.)氏を逮捕します。警察はパトカーの後部座席にモハメッドを乗せ、ハーメルンの警察署に向かいます。
ところが、パトカーが警察署の前に到着し、署の「自動の巻き上げドア」が開くのを待っている間、パトカーの後部座席にいたモハメッドが勝手に窓を開け、弟イブラヒム(Ibrahim S.)氏の名前を叫びました。そして瞬く間に弟イブラヒムがやってきました。弟は警察署の前で兄の到着を待ち構えていたのです。
逮捕された兄を警察署で待ち構えていた弟が助けようとした
するとイブラヒムは外側からパトカーのドアをこじ開け、後部座席にいる兄モハメッドをパトカーの中から引っ張り出そうとしました。同じく後部座席に座っていた警察官が二人の間に入り、モハメッドの首根っこをつかみ逃亡を防止します。署の前の騒ぎを聞きつけ、警察署の中から警察官が数人応援に駆け付け、モハメッドとイブラヒムの兄弟は警察署の地下にある独房に入れられました。
この兄弟が警察に捕まるのは初めてではありません。兄のモハメッドは過去にも麻薬の売買、暴行、窃盗、恐喝などで捕まった「犯罪の総合商社」のような人です。ドイツ市民の刑罰歴が記録されている連邦司法事務所の公的な登録簿にはモハメッドについて15点もの登録がありました。弟のイブラヒムにいたっては、麻薬の売人を奪略し、10代の女性にわいせつ行為をしたことによる逮捕歴がありました。管轄の警察署の記録には「イブラヒムは武器を好み暴力的」と記載されています。
次の日、弟のイブラヒムは警察署から釈放されますが、前日にガソリンスタンド強盗をした兄モハメッドは身体の前で手を束縛された状態で司法警察員とともに近場の簡易裁判所に向かいます。裁判所の7階で女性裁判官が「モハメッドが保釈されるか、それとも勾留されるか」を決めることになっていました。