7月7日に投開票が行われた東京都知事選挙は、「現職の小池百合子氏と蓮舫氏の一騎打ち」という当初の予想を裏切り、石丸伸二氏が2位に食い込む結果となった。武蔵大学社会学部教授の千田有紀さんは「蓮舫氏は、あきらかに浮動票をつかみ損ねた。政策以前に選挙の『やり方』がまずかったのではないか」という――。
2024年7月6日、新宿で最後の訴えをする蓮舫氏
写真=共同通信社
2024年7月6日、新宿で最後の訴えをする蓮舫氏

ネットで知名度を上げた石丸氏

小池百合子都知事が再選されるとは思っていたが、対抗馬は蓮舫氏だと思っていた。2位に石丸伸二氏がつけるとは、まさかの事態である。しかも、24.3%という驚異の得票率である。TikTokなどでの切り取りショート動画を駆使して、瞬く間に知名度をあげた。

若い人に聞くと、「選挙後のインタビューの受け答えの意味がわからないうえに攻撃的で、あまりの印象の違いにびっくりした」という人が多くいた。リアルのやり取りを見て、ショート動画での好印象が覆ったのだという。

確かに言葉の「定義」をめぐって、延々と攻撃的に相手を問い詰める様子を映した動画を見ていると、「この人とともに実務をやっていくのは大変なのではないか」と感じてしまう。とくに女性に対してのあたりがきつく、人によって対応をかなり変える様子が見受けられた。上に立たれたら大変そうだ。男性からの得票率が高く、女性からの投票が少ないのは、女性のほうがそれを敏感に察しているからなのではないかという気がした。

Xで盛り上がった“石丸構文”vs“進次郎構文”

冗談のような話だが、思わぬところで「漁夫の利」を得たのは、小泉進次郎氏だったようだ。Xでは盛んに、「“石丸構文”と“進次郎構文”の違い」についての投稿がされており、ちょっとした“祭り”状態になっている。

例えば、「朝起きたら何しますか?」という問いに、石丸構文なら「起きるというのは精神の話ですか?……物理の話をされています? その定義も言わずに……」と延々と続くのだが、進次郎構文では「目が覚めると思います」。

典型的な世襲議員のひとりである小泉進次郎氏だが、育ちの良さを感じさせ、誰も傷つけない構文はよきものだと“うっかり”ホッとさせられた。いかにもX的な、ネット上のネタにすぎないのだが。