経団連の提言は自分の姓について考えるきっかけに
法律上の婚姻経験者で、婚姻時に姓を変えた人の半数以上が改姓によるさまざまな不都合を感じていることも判明した。
「身分証明書、金融機関、運転免許、印鑑、これらを変更するコスト(時間、お金等)、相手は何もしなくてもいいのに、不平等しか感じない」(女性:40代)
また、ビジネス上、旧姓を使用できてもいろいろな問題があるという。
「現在も仕事では旧姓を使用。業務上、旧姓のままだと都合が良いということもあるが、『自分自身』を表す名前を変えるということに、とても違和感がある」(女性:30代)
「過去の業績(名前)が問われる業界で働いている。今も旧姓で仕事をしているが、旧姓の自分は法的には存在しない人間であるため、特に海外で働く場合、さまざまな問題に直面する。感情論や信条論ではなく、シンプルに不便。業績的に不利になることも多い」(女性:40代)と切実だ。
経団連の提言では、主にビジネス上のリスクが挙げられているが、夫婦別姓への関心の背景には、家族の在り方や結婚観、さらにはアイデンティティーの問題までさまざまな理由が見えてくる。その解消策として「選択的夫婦別姓」があり、それは決して強制的ではなく、選択的=自由に選べることにもかかわらず、なぜここまで法制化が進まなかったのかとますます疑問が募る。
この問題をとおして、自分の名前について考えるきっかけになったという人もいることだろう。次回からは、実際に「選択的夫婦別姓」の実現に向けて、さまざまな形で動き出した人たちを追っていく。
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。