残業規制で人件費はさらに上がる
建築費指数は21年以降、急ピッチで上昇中だ。コロナ禍による原料の供給制約に経済回復が重なり、ウクライナ戦争で上昇が加速された。セメント、照明器具、浴室、トイレ、洗面台など、値上がりしないものはない。
24年4月から土曜出勤も普通だった建設産業で残業規制が実施され、人件費はさらに上がりそうだ。
職人も鉄筋工やコンクリート型枠工などが引っ張りだこだ。高い工賃を払って要員を確保しないと建築が進まない。
また、日本経済は新築住宅建設など土木・建築といった建設事業への依存度が高い。
前回の不動産バブル崩壊に反省がなく、政府建設投資で景気を支えてきた。このため過剰な建設業人口を減らし、ほかのデジタルやITなどに移転を促す政策もなかった。
過剰な建設業人口を抱えながら、止まらない再開発現場も迫る竣工時期に合わせるため、要員の奪い合いをしながら、建設現場はフル操業の状態が続く。
この結果、職人の高齢化や職人不足を招き、残業が多い業種となった。
公共事業も雇用対策として大盤振る舞いが続くので、需要はひっ迫する。
人件費を下げる要素は、いまのところない。
中古マンション価格が逆転するウラ事情
中古マンション価格は、どう動いているだろうか。
建築費が高騰すれば、建築費が安い時代に建てられた中古マンションは割安となって人気が出るので値が上がる。これは当たり前だ。
経年劣化を除けば、人件費や部材も安い時代につくられ、新築よりしっかりした素材で高級につくられている場合もある。
中古マンションが建てられたころの建築費指数と現在の指数を比較すると、10~15年前の建築費は断然安い。過去10~15年間に建てられたマンションのほうが、経年劣化を考慮しても、なおお買い得と判断できるケースも少なくない。
東京カンテイによる中古マンションの価値を示すリセールバリュー調査を見てみよう。
築10年程度を経た中古マンションの平均希望売り出し価格を新築時と比べて算出したところ、2022年の首都圏の平均は132.5%に達した。
前年から12.7%上昇しており、新築時の1.3倍の価格で売りに出されていた。
18年時点では91.4%と新築時を下回っていて新築よりは安かった。20年に100%を超えて逆転し、なお上昇している。