大きく膨らんだ新しい不動産バブルは、今後調整が起きるのか
冒頭でも述べたように、現在の東京のマンション市況は、ほぼ40年ぶりのバブル再来のような状況だ。
「東京での拠点・設備投資」など、他用途の融資も最終的に東京などの不動産に流れ着くが、じつはもっと多い。
かなりの融資が、最終的には不動産がらみの売買に流れているはずだ。
たとえば、事業会社の多くも、人口減少のなか、国内生産は抑え、自ら遊休地を使った再開発などに乗り出しているからだ。企業に回ったマネーも、政府が目指す本来の健全な経済成長から外れた不動産活用での使われ方をしてきた。
銀行は不動産・土地を最良の担保とする。
今回の不動産バブルは銀行融資の担保そのものの土地の価値も上げ、金融機関からの融資量を増やす効果もあるが、これ自体、じつはバブル的なお金の回し方なのだ。
日銀は世界で最も長く金融緩和をやってしまい、利上げや量的緩和の縮小は最も遅れている。
低金利政策が10年以上続いたことで経済の新陳代謝が鈍り、結果的に潜在成長率は0.3%程度までに縮小した。
なぜなら、人口減少で国内の経済活動は縮小の方向で、少子高齢化は個人(家計)も企業も投資しない方向性を強めているからだ。
住宅の売買のタイミングを判断する画期的な方法
一方、政府の累積債務は1200兆円を大きく突破してしまった。
住宅の売り時、買い時の正確な判断のためには、じつは日本銀行のバランスシートの中身のほか損益計算書と財務諸表を知っておいたほうがいい。
日銀のバランスシートから現在進行中の不動産バブルも実感として感じ取れる。
日銀券の価値は、日銀の資産の質が担保しているが、その資産といえば政府がバンバン発行した、返すことができないような大量の国債だ。
円の通貨価値に不安を寄せる投資家は海外にマネーを投資するが、国内分は、国債中心の債券や低利の預貯金は避け、株や不動産への投資にシフトさせているのだ。
このような投資スタンスに変えておけば、財政と日銀の持続性への不安から、近い未来にやってくるに違いない国債バブルの崩壊の前兆として起きる不動産の急な値上がりにも対処できる。
預貯金などより不動産や株に資産を移す動きとともに、インフレがさらに加速する局面が必ずくるからだ。
それは「日本の財政はもたない」という破綻懸念からくる。背景には絶望的な少子高齢化、人口減少の現実があり、人口動態は50年、100年かけないと変えられないのだ。
日本経済の縮図である日銀のバランスシートを見ながら、不動産の売買を判断するということは、これまで素人には思いもよらないことだった。
しかし、これからは金利動向に加えて、マクロの資金量と膨らみすぎた日銀のバランスシートがインフレと不動産に影響を与え続ける。
それがどういう形になるかに注目しながら、不動産を売買する必要がある。
1986年朝日新聞社入社、大阪経済部、東京経済部、『ヘラルド朝日』、『朝日ウイークリー』、「朝日新聞オピニオン」、『AERA』編集部、不動産業務室などに在籍。2023年朝日新聞社退社。不動産業(ゼネコン、土地、住宅)については旧建設省記者クラブ、国土交通省記者クラブ、朝日新聞不動産業務室などで30年以上の取材・調査経験を誇る。不動産をはじめとする資本市場の分析と世代会計、文化財保護への造詣が深く、執筆した不動産関連の記事・調査レポートは1000本以上に及ぶ。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)、『「老人優先経済」で日本が破綻』(ブックマン社)、『世代間最終戦争』(立木信名義、東洋経済新報社)、『若者を喰い物にし続ける社会』(立木信名義、洋泉社)、『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)など多くの著書がある。