50歳で19歳年下の師匠を得て、日本中を歩いて回る

しかし、伊能忠敬は違う。彼の魅力は、もう一度「なりたかった自分」に再挑戦する勇気ある行動にある。

まず驚くのは、江戸で西洋暦法・測図法を学ぶのだが、師の高橋至時は19歳年下である。

商売で成功し、名主となった男に、もしプライドがあれば、受け入れ難い要因になるはずだ。でも、彼は純粋に最新の暦法・測図法を学びたかったのだろう。年の差などものともしない。

さらに実際に測量を行い、それまで誰も知らなかった真の日本の姿を浮き上がらせる。

学んだ測量技術を使って、日本中を歩き、地図を描いていた時、彼の心は喜びで躍動していたに違いない。なんて素敵な人生なのだろうか。

伊能忠敬の墓は、師匠である高橋至時の墓の隣にある
筆者提供
伊能忠敬の墓は、師匠である高橋至時の墓の隣にある

会社の出世だけが「成功」ではない

100年時代というのは、ポジティブに考えれば、「かつてなりたかった自分」へもう一度挑戦できるチャンスが与えられたのだ、と捉え直すことができる。

会社で出世する島耕作のような人生がすべてではない。仕事だけの代えがきかない一幕完結の発想はもうやめよう。

まずは一幕で商売を経験してビジネス力の基盤を作り、二幕で自分の特技に磨きをかけて、それと絡めて小商いができれば、気持ち的にも金銭的にも充足された時間を過ごすことが可能だ。