日本の役員人事は“トップの信頼の厚さ”で決まる
では日本企業はどうなのか。人事部長はこう語る。
「甘いなと思います。役員人事は経営トップの専管事項であり、トップの信頼が厚いというだけでたいした調査も行われずに選ばれる。実際に役員の女性関係の噂が飛び込んでくることもありますし、この人、大丈夫かなと思うこともありました」
その後、人事部長は経営トップに具申し、役員候補者の女性関係の調査をすることになったという。「社内の懲戒規定の処分歴などをデータベース化し、一目でわかるようにしました。過去の女性関係で処分歴だけではなく、外部の調査会社に委託して素行調査を実施し、問題があればトップに伝えるようにしています」と語る。
ようやくこのレベルなのだ。企業体質によっては、素行調査に問題があっても「トップの信頼の厚さ」が優先され役員に就くことは考えうる。
発覚しなければ見逃される
では他の企業はどうなのか。役員に関しては一応役員規程を設けているところも多い。サービス業の人事部長はこう語る。
「役員の要件として『能力、実績、品格・人格が優れていること』という文言があります。もし女性関係に問題がある人であれば、とても品格があるとはいえません。しかし、本人について詳しくチェックしているわけではない。実際に不祥事が発生すれば処分されるでしょうが、発覚しなければ見逃される可能性はあります。もし、将来の役員候補と言われている人であれば、人事担当役員から『身辺整理ぐらいちゃんとやっておけ』と言うことはあると思います」
役員登用に関しては厳格な規定もなければ、事前の調査などチェック体制も整備されていないという。そうなると、役員昇格後ないしは社長になって発覚した場合に処分するしかないことになる。