
フジテレビの会見後に放送されたTBS「報道特集」
中居正広氏の加害行為を1年半前に知っていながら、被害女性への聞き取りもなく、コンプライアンスの担当部署にも伝えないまま、中居氏の番組出演を継続していたフジテレビ。会見後、「#私が退職した本当の理由」というハッシュタグがSNSのXでトレンド入りした。自分が会社を辞めたのは、社内でセクハラを受けたのに会社がきちんと対応せず、心身共に限界に達したからだ、といった女性たちの告発が相次ぎ、自然発生的に「#MeToo(ミートゥー)」運動の輪が広がった。
女性たちが告発した内容は、以前芸能界での性加害を告発したタレントのマリエ氏と同じタイプのものだ。今回、中居問題を機に『FRIDAY』誌の取材に答えて、マリエ氏は次の問題点を指摘している。「リバースキャンセルカルチャー:Reverse Cancel Culture(逆に被害者が排除される状況)」及び、「サイレントエフェクト:Silent Effect(被害を訴えた結果、仕事などの案件が静かに取り消されること)」と言われる二次被害についてだ。4年たった今も、それが自身の障害や傷となっている、と語っている。
ところが、こうした女性たちの訴えとは真逆の内容になっていたのが、「メディア業界における女性の扱いを考える」と題し、フジテレビの会見から数日後の2月1日に放送されたTBS「報道特集」だった。最大の違いは、Xでの投稿にあふれていた女性たちの怒りが、そこではきれいに消えていたことだ。その代わり、「セクハラに対する感覚がマヒしていた」「自分はわきまえすぎていた」とメディア業界の女性たちが反省する内容になっていた。こうした状況について女性の識者は、「典型的な日本メディアのジェンダーの取り上げ方だ」と指摘する。いったいどういうことなのだろうか。
「セクハラ等が起きやすい背景に女性の意識の問題」と主張
番組では、テレビに出演する女性の年齢が10代や20代に大きく偏り、30代以降急減していることを、元TBSアナウンサーの小島慶子氏がグラフと共に指摘。これ自体、女性の扱いという点で極めて大きな問題だが、とことん掘り下げられることはなく、次のコーナーに移動した。「メディア業界でセクハラ等のトラブルが起きやすい背景には、女性たちの意識の問題もある」という男性のナレーションが流れた後、女性キャスターの司会により、メディア業界で働く女性3人がセクハラについて語る座談会が行われた。
全体で約22分の特集のうち、約6分にわたる番組の目玉と言ってもいいコーナーだ。しかしそこで交わされたのは、「セクハラを受けたという後輩の声を無視してしまった」「セクハラを受け流すことを醸成してしまった責任を感じている」といった会話だった。