テレビで放送される映像など華やかな表舞台だけを見ていると、舞台裏で起きているハラスメントには気づかない。芸能従事者やメディア関係者にアンケートを実施した森崎めぐみさんは「パワハラや深刻な性被害を含むセクハラの実態が寄せられた。私が芸能界で仕事をしてきた実感からも納得できる内容だった」という――。

※本稿は森崎めぐみ『芸能界を変える たった一人から始まった働き方改革』(岩波新書)の一部を再編集したものです。

映像制作チームの舞台裏
写真=iStock.com/ppengcreative
※写真はイメージです

芸能界におけるハラスメントの温床とは何か

芸能界、文化芸術、メディアで働く人へのアンケート(2022年)の回答を分析する過程で、具体的なハラスメントの種類や発生場所、行為者の属性などに規則性が見られることがわかり、全体の構造の中で、どの現場でどういった被害が起こりやすいのか、おおよその分布が把握できるようになってきました。いわゆる「温床」と言われるシチュエーションが想像できるようになってきたのです。いわばハラスメントマップが描けるようになってきました。

被害が起きているハラスメントの種類は次のとおりでした(複数回答、411名)。

1)パワー・ハラスメント 383名(93.2%)
2)セクシュアル・ハラスメント 302名(73.5%)
3)モラル・ハラスメント 256名(62.3%)
4)セカンド・ハラスメント(二次被害) 143名(34.8%)
5)アカデミック・ハラスメント 85名(20.7%)
6)マタニティ・ハラスメント 75名(18.2%)
7)カスタマー・ハラスメント 74名(18.0%)

いずれもあまりにも甚大な数字で驚くばかりです。一方で現場にいる身としての肌感覚では納得のいく数字で、この程度は起こっているだろうと感じます。やはりデータになると客観的に考えられると実感します。

「ドラマの衣装合わせで下着を脱がされた」など被害の声

自由記述に寄せられた被害事例には次のようなものがあります。

パワハラの声

「『わきまえろ!』と暴言を吐かれた」
「撮影現場で四六時中、怒号や怒声が鳴り響く」
「演出家にカバンで殴られた」
「2、30人の受講生がいる前で、平手打ちをされた」
「グループLINEで『使えないやつ』と言われた」
「電話で『クズ、役立たず』などの暴言を吐かれた」
「髪の毛をつかまれて部屋中を引きずり回された」

セクハラの声

「ドラマの衣装合わせで、仕切りをつけてもらえず下着を見られたくなくて恥ずかしがっていたら、『女優の○○さんは堂々と人目を気にせず脱いでいた。女優はそうでないと』と言われ、下着を脱ぎ裸を数人に見られた」
「脱ぐ演出を強要された」
「仕事で激しい絡み(ラブシーン)が多く、彼女にトラウマを植え付けてしまった。(絡みがしたくて)役者をやっていたのではない」
「合宿先で無理矢理セックスをされた」