いっしょに歩いた道と分かれた場所

だから、事故や無意味な対立や切ないハレーションが起こって、本筋じゃないとこでエネルギーを無駄にしないように、話のポイントがわかるやりとりをしなければならない。そのために僕たちは話し合いをする必要がある。結論の話はまだ先だ。

岡田憲治『教室を生きのびる政治学』(晶文社) 
岡田憲治『教室を生きのびる政治学』(晶文社) 

そういう最初の整理だってけっこう面倒だ。むしろ話し合いがあんなに疲れる理由は、たいていここにあったりする。

僕たちは、本当に人の話を聞かない。シンポジウムで(公開研究討論会みたいなもの)、トークが終わって司会者が「フロアから質問があれば挙手をお願いします! いいですか、『質問』ですよ! それ以外はご遠慮ください!」って何度も念を押しているのに、マイクを持たせると必ず「演説」を始めるおじさんやおばさんがいる。もちろん悪気なんてない(社会には理由もなく「人の言うことを聞く」人たちがこんなにたくさんいるのに、「話し合い」のルールをお願いされるときは、「人の話を聞いていない」のだ)。

でも交通整理の中には、こういう基本的な「いや、もうその話終わったから!」みたいなツッコミだけでない、もう一つものすごく大事なことが含まれているのだ。それは、いっしょに歩いた道すじと、分かれ道になったところを確認することだ。

岡田 憲治(おかだ・けんじ)
政治学者

1962年東京都生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。専修大学法学部教授。民主主義の社会的諸条件に注目し、現代日本の言語・教育・スポーツ等をめぐる状況に関心を持つ。著書に『なぜリベラルは敗け続けるのか』(集英社インターナショナル)、『ええ、政治ですが、それが何か?』(明石書店)などがある。