「両立できそうにないので結婚ではなく仕事を選ぶ」女性たち

つぎは、②「男性稼ぎ主モデルの働き方による男性の長時間労働」だ。

日本の男性の労働時間は、他の先進諸国よりも長く、しかも1985年以降30年間ほとんど減っていない(たとえ父親でも減っていない)(国立社会保障・人口問題研究所「第28回厚生政策セミナー」配布資料)。

他方で2020年代からは、女性の就業化の結果として、若い未婚女性のあいだで「結婚・出産をして仕事も続けたい」という「共働き・共育て」志向が主流となっている。そして、「現実としては共働き・共育てができそうにないので、結婚ではなく仕事を選ぶ」という非婚化が広まっている(図表1)。

【図表】若い未婚女性の理想と現実
図表=筆者作成

この背景には、男性の長時間労働があるだろう。つまり、「共働き・共育てをしたいのに、もし結婚したら、夫が長時間労働なので、家事・育児は主に自分の負担となる。すると、自分のキャリア蓄積が難しくなってしまう。だから、キャリアのために結婚は諦める」というわけだ。今後も、「男性稼ぎ主モデルの働き方による男性の長時間労働」が続く限り、非婚化と少子化はますます進んでいくだろう。

したがって少子化緩和のためには、男性の働き方を「男性稼ぎ主モデル」から「共働き・共育てモデル」に更新し、男性の労働時間を減らさなければならない。

では具体的にはどうしたらいいのか。

夫の収入を下げずに労働・通勤時間を減らす必要がある

日本でのこれまでの多数の調査研究によると、夫の収入に変化がない条件下で、「夫の労働時間・通勤時間」が減ると、「夫の家事時間・育児時間」が増え、「妻の出生意欲・希望子ども数・第1子出産確率・第2子出産確率・子ども数」が増える傾向がある(内閣府「ESRI Research Note No.17, No.66」2011・2022年、厚生労働省「21世紀出生児縦断調査及び21世紀成年者縦断調査特別報告書」2013年)。

よって、男性の「単位時間あたりの労働生産性」を上げて、「収入低下を伴わずに」労働時間を減らしていく必要がある。そのためには、働き方の柔軟化・効率化が重要だ。

たとえば欧州では、多様な労働者の健康保護・人材確保と、労働生産性の向上との好循環を促進するために、デジタル化やテレワーク、フレックスタイム、ジョブシェアリング(タンデム〔二人乗り〕方式)、労働基準法改正(例:11時間の勤務間インターバルの義務化、月20時間超の残業時間の割増率1.5倍化、法定労働時間の週35時間化)などの取り組みによって、働き方の柔軟化・効率化を進めて、労働生産性を高め、男性の労働時間を減らしてきている。日本でも今後、労働基準法の改正などによる「テコ入れ」も含めて、これらの取り組みを進めていく必要があるのではないか。