NHKの「大奥」に出てきた間部詮房は将軍の又従兄弟

小花和成武は家宣が甲府藩主でいた頃からの家臣で、家宣が将軍になると、その子が旗本430俵に取り立てられている。実は、この小花和成武の妻は家宣の従姉妹いとこなのだ。つまり、老中にまで出世した間部詮房は家宣の従姉妹の娘婿。簡単に言えば、家継の又従兄弟またいとこなのだ。

血縁だから抜擢されたのではなく、おそらく間部の才能を見いだした家宣が、数少ない親族から妻を選んだのだろう。そして、間部はその期待に十分すぎるくらい応えたに違いない。

NHKドラマ10「大奥」で、吉宗(冨永愛)の側近・加納久通かのうひさみち(貫地谷しほり)が、吉宗を将軍にするために数多くの関係者を暗殺したことを述懐するくだりがある。この加納久通(史実では男性)は、吉宗の子・家重の親族なのだ。

家重の母は紀伊藩士・大久保忠直の娘であるが、忠直は加納家からの婿養子である。実際はもうちょっと縁遠いのであるが、久通は忠直の兄・加納久政の養子なので、家系図的には家重の母と加納久通は従兄弟にあたる。

それだけではない。大岡越前守忠相ただすけも親族なのだ。忠相の曾祖母そうそぼが、加納久政・大久保忠直の姉妹なのだ。大岡忠相は、伊勢の山田奉行の時に紀伊藩に不利な判決を出したことがキッカケで、吉宗に見出されたといわれているが、実はその前から吉宗は忠相のことを注目していたのかもしれない。

このように、江戸幕府の人脈は複雑な閨閥けいばつが絡み合っていて、一瞬気がつかないが、よくよく注視してみると意外な関係が浮かび上がってくるのである。

【図表】徳川吉宗と側近・加納久通をめぐる家系図
筆者作成
菊地 浩之(きくち・ひろゆき)
経営史学者・系図研究者

1963年北海道生まれ。國學院大學経済学部を卒業後、ソフトウェア会社に入社。勤務の傍ら、論文・著作を発表。専門は企業集団、企業系列の研究。2005~06年、明治学院大学経済学部非常勤講師を兼務。06年、國學院大學博士(経済学)号を取得。著書に『企業集団の形成と解体』(日本経済評論社)、『日本の地方財閥30家』(平凡社新書)、『最新版 日本の15大財閥』『織田家臣団の系図』『豊臣家臣団の系図』『徳川家臣団の系図』(角川新書)、『三菱グループの研究』(洋泉社歴史新書)など多数。