OSOが駆除されていたことをスクープした岩崎はこう振り返る。

「例年、OSOは襲撃を始めると比較的短い間隔で次々と場所を変えて襲っていくのですが、昨年は6月24日に標茶町で牛1頭を襲った後、2カ月以上も音沙汰がなかったので『どこかで死んでいるのでは』とも思ってました。だから、その最期については『ああ、そういうことだったのか』と納得感もありました。何より死んだとはっきりしたことで、酪農家の方々が安心できたのはよかったなと思っています」

OSO18を「肉食化」させたもの

本来ヒグマは山の草木や木の実、昆虫などを食べる。なぜOSOは牛を襲うようになったのか。内山ら「クマ担」チームが専門家への取材などを通じて出した答えは、道東で増えすぎたエゾシカによって草木が食いつくされた結果、食べるものがなくなったクマがシカを襲うようになったという「肉食化」の流れだった。

「過去10万年で比べても、シカの生息数は最多水準という研究結果も出ています。初めは死んだシカを食べ、次第にシカを襲うようになる『肉食化』の流れの中で、OSOはどこかで死んだ牛を食べて味を占め、今度は牛を襲うようになったのではないでしょうか」

シカの生息数が急増したのは放牧地の栄養たっぷりの牧草を食べるようになったからだし、クマはそのシカとデントコーン(飼料用トウモロコシ)が目当てで牧場付近にやってくるのだから、元を正せば、「OSO18を作り出したのは人間」ということになる。

「もう死亡事故は起こさせないぞ」

東区4人襲撃事件、三角山「冬眠穴」事件、そしてOSO18による一連の牛襲撃事件……北海道新聞「クマ担」の事件簿から浮かび上がってくるのは、人間社会の変化がダイレクトにクマの行動に変化を及ぼしているという現実だ。

裏を返せば、それだけ高い適応能力を持つクマと向き合うには、本来人間の側も確固たる「グランドデザイン」を求められるはずだ。

「まず市街地でのクマによる死亡事故はもう絶対に起こさせないぞ、というのが『クマ担』の大目標です」と内山は語る。