自分に条件と制限を設けず、歪みなく、真っ直ぐに生きる

どんな境遇にあろうとも、誇りある人間に子どもを育てなければいけないという母たちの思いを、高橋さんは次の世代の子どもたちに伝えなければいけないと強く思う。

おせっかい協会を立ち上げた高橋恵さん
撮影=伊藤菜々子

「大正時代の女性たちの凛々しい姿を、後世に残したい。私の母の教えは、子どもたちにつなげていかなければならないと思うのです。子どもたちは誰から何を学び、何に気づいて大人になっていくのか。時代は違っても、私の考えが古くても、そういう教育を受けてきたことで今があるので、これはもっと多くの人に知らせていかないといけない。

今の人たちがどれだけ、自分に条件と制限を設けず、歪みなく、真っ直ぐに生きているのか。今の子どもたちを見ていると、ひきこもりが多いと聞きますし、しっかり伝えていかないと。もう、私の地球滞在時間は短いのですが、これだけはやり遂げたいと思っているんです」

迷っているうちに、心の隙間にゴミがたまっていく

高橋さんだからこそ気づく、子どもやその家族の歪みの一端が、昨年、不登校の児童生徒数が過去最多を更新したという現状に表れているのかもしれない。

「自分がどう歪んでいるか、わかりそうでわからない。では、どうやって歪みをほぐせるのか。私は歪みというのは、心の隙間にゴミが溜まるから生じるのだと思う。何をやるにも、どうしよう、ああしようと悩んでいたら、心の隙間がゴミだらけになって、わけがわからなくなってしまう。だから、“即速行動”なのです。とにかく、すぐ行動することが大事。私たちは『おせっかいSDGs』というのをつくったのですが、Say=言ってみる、Do=やってみる、Go=行ってみる、Speed=即行動。これが大事」

能登半島地震に際して、いち早く缶詰の寄附活動を行った
写真=高橋さん提供
能登半島地震に際して、いち早く缶詰の寄附活動を行った

主な「おせっかい活動」は、全国各地での講演や自身の書籍、ラジオ番組出演や、毎日欠かさない、音声SNSアプリ「clubhouse」での月に50本の配信など、高橋さんの人間力を通した普及活動だ。講演は日本にとどまらず、インドネシアにまで“愛あるおせっかいのススメ”は及んでいる。定期的に開催する自宅での「お話会」も好評で、中野区長が参加することも。

「私は中野をおせっかいの町、親しみやすく、誰でも生きやすい町にしたいですね。ここが“おせっかいの町”だとなったら、皆さん、もっとおせっかいを意識するのでは」

昨年秋、設立10周年を迎え、国内のおせっかい支部は北海道、千葉、東京、埼玉、長野、愛知、大阪、岡山、山口、香川、愛媛、福岡県、鹿児島、沖縄と全国に広がり、メンバーたちがたんぽぽの綿毛のシンボルマークや、“おせっかい名言”の日めくりカレンダーなど、さまざまな普及促進のアイテムを作り、活動を盛り上げ続けてくれている。