50歳前後で幸福度がどん底になるワケ
年齢と幸福度の関係がU字型になる背景には、諸説あります。
代表的なものに、40代から50代にかけて理想と現実のギャップにさいなまれ、幸福度が低下してしまうという説があります(*2)。
若年期に思い描いた「大人の自分の姿」が中年期に現実になるわけですが、思い描いた理想と現実のギャップに直面した場合、「こんなはずじゃなかった」と打ちひしがれてしまうわけです。
アメリカのノースウェスタン大学のハネス・シュヴァント准教授の研究によれば、若年期ほどよりよい将来を予想し、生活全体の満足度も今より高くなると見積もる傾向があります(*3)。若いときほど今後の人生への期待値が高い状態にあるわけです。これが中年期の理想と現実のギャップを大きくする原因となります。
また、シュヴァント准教授は高齢期になるほど将来の生活全体の満足度を低く見積もる傾向があると指摘しています。このため、理想と現実のギャップも小さく、予想していなかった小さなポジティブな出来事が幸福度を引き上げる要因となるわけです。
介護と子育ての負担に加えて仕事上の責任もピークに
年齢と幸福度の関係がU字型になる二つ目の理由として、50歳前後で親の介護と子育ての二重の負担がのしかかり、幸福度を低下させるという説があります(*2)。
50歳前後になると親も高齢で介護が本格的に必要となる場合が増えてきます。また、子どもがいればちょうど大学進学の時期と重なり、金銭的な負担もピークとなります。これらの負担が重くのしかかり、幸福度を低下させるわけです。
また、仕事面では中間管理職として働く時期でもあり、仕事の責任もストレスの原因となります。日本の場合、厚生労働省の『賃金構造基本統計調査』が示すように、直近の10年間で課長以上の管理職になれる比率が徐々に低下しているため、そもそも管理職になれない場合も増えています。管理職になったらそれはそれで大変なのですが、なれない場合はより大きなストレスとなるでしょう。
このように仕事面でもストレスが多い時期であり、幸福度が低下する原因になっていると考えられます。