過剰演出と言い切りのメディア報道

伝えかたということで言えば、マナー講師だけの問題とは言い切れない面もあります。じつはマナーを番組や記事として世に伝えるテレビ番組や雑誌、ニュースサイトといったメディア側の問題もある、と見ています。

まず、メディアが型中心の情報を伝えたがることは、大いに問題です。マナーとは相手を思いやる心がすべての土台です。しかし一方で、心はつかみどころがなく、わかりにくいものです。また情報を伝達することを使命とするメディアからすると、情報性に欠ける面もあります。型なら視聴者や読者が知って得する情報になるわけです。だから型を紹介する企画内容がメインとなってしまいます。

もう一つの問題は、よりおもしろく見せるために、時に過剰な演出が入ること。たとえば、人気タレントがマナー講師からスパルタ教育を受けることで笑いをとる。その影響で、マナー講師は全員あのようなスパルタ教育をしていると勘違いした人も多いと思います。

三つ目の問題は「言い切り表現」を使うこと。メディアはよりわかりやすくしたいという点から、微妙なことや複雑なことをシンプルに伝えたがります。そこで曖昧さを消すために、つい言い切り表現でまとめてしまうのです。「○○○○はNG」と言い切り表現を使うのは、必ずしもマナー講師だけではありません。むしろメディア側の意向でそうなってしまうことが多いのです。メディア側の意向は理解できるものの、マナーは言い切ってしまうとマナーでなくなってしまうケースが多いのが悩みどころです。

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写真=iStock.com/oatawa
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炎上ネタの矢がマナー講師に向かう

私は、そうした過去の経験から、現在は取材や出演の依頼をいただいた時点で、マナーが誤解されるような過剰な演出や言い切り表現を使わないことを約束してもらうようにしています。約束してくれない場合、依頼をお断りすることもあります。

しかし私もかつてはそうでしたが、多くのマナー講師は、そこまでメディアに言えないのが一般的なのだと感じます。そうして、メディアの言いなりとなり、結果的に炎上ネタの矢がマナー講師に向かってしまっているわけです。