オスは長くて曲げやすい陰茎でメスの腹部を探り交尾

オスのマウントをメスに許容するよう、オスがメスを追い詰めることもあります。メスが立ち止まらない場合は、オスが疲れて追尾を止めるか、もしくはメスに対し攻撃的になってしまうので、飼育員さんは気をつけて見ています。

アフリカゾウ(オスのタマオとメスのアイ)の交尾(2000年8月1日、多摩動物公園にて)
筆者撮影
アフリカゾウ(オスのタマオとメスのアイ)の交尾(2000年8月1日、多摩動物公園にて)

メスが一度立ち止まると、オスはメスの後ろに立ちます。メスがお尻を向けてオスに近づきマウントを許容するか、もしくはオスが頭や牙を使ったりして、適当な位置につかせます。オスは体を持ち上げるために自身の頭をメスの背に乗せ、次に両方の前肢を乗せ、完全に勃起した状態でメスにマウントします。そして、勃起したS字状のペニスで陰部に挿入できるまでメスの腹側を探るのです。交尾行動は数時間に一度、もしくは数日程度で数度見られます。

しかし、それでも100パーセント妊娠するわけではありません。理由ははっきりしていません。飼育下では卵巣や子宮に異常のあるメスが少なくなく、特にアフリカゾウに多いことが海外の研究でわかっています。この生殖器系疾患がある場合や、交尾しても妊娠に至らない(おそらく着床しにくい)個体、排卵すら停止してしまっている個体がいるようです。それも20~30歳代の繁殖適齢期のメスでそうなってしまいます。

2年という哺乳類最長の妊娠期間を経て100キロの子を産む

もし、無事に妊娠できたら、メスは約2年という哺乳類最長の妊娠期間を過ごすことになります。出産のとき、胎子は約100キログラムもの大きさになります。ただ、お母さんゾウが体重3~4トンなので、比率としてはそれほど巨大児というわけでもありません。妊娠していることも外見からはわかりにくいほどで、出産半年前ぐらいまでは、動物園のお客さんが見て「おなかが大きいな」と気づくことはあまりないでしょう。

私の研究室では、交尾した後にメスのホルモン値の動きを見ながら妊娠判定をします。そして、妊娠末期になったら、毎日採血をして、出産日を予測する方法が取り入れられています。最後は陣痛などの行動から出産を待つことになります。

ゾウの繁殖において、動物園とこのような密な連携をしているので、できれば赤ちゃんゾウ誕生の瞬間には立ち会いたいもの。動物園から「いよいよ出産が近いかも」と呼んでもらえるのですが、駆け付けてもいつも間に合わず、実際に立ち会えた試しはありません。