動物園では動物たちのかわいい姿だけでなく、生々しい繁殖行動を見ることもある。京都市動物園で12年間、キリンの飼育担当者だったタカギノネさんは「キリンは1年じゅう交尾が可能。来園者が交尾を目撃することも多かったが、特殊な体型なので、オスがメスにマウントして挿入するのは簡単ではない」という――。
エレクトしながらマウントしようとするキヨミズ
エレクトしながらマウントしようとするキヨミズ(写真提供=京都市動物園

動物園の人気者キリンの飼育を12年間担当して…

私はキリンという動物を間近で12年間見てきました。2022年まで京都市動物園で飼育員として勤務しており、そのうちキリンを担当したのは2002年から2014年です。あまりにもメジャーな動物でありながら、その生態、行動、体の仕組みなど、あまりにもいろいろなことが分かっていないキリンを知るために飼育作業の傍ら観察をしまくった12年でした。

動物園で動物が交尾をするシーンを、来園者が目にすることもあるのですが、キリンに限らずその瞬間に遭遇した人たちの反応はさまざまではあるものの、自身と同じ種であるヒトの交尾、すなわちセックスと重ねて見る人が大半であると感じました。つまり、繁殖のための行動というよりもいやらしい行為として見ている感じがするのです。

ほとんどの動物たちの交尾の目的は繁殖です。いやらしくもないし、見られて恥ずかしいとも思っていません。なのに、見ている人の多くはニヤニヤしたり、冷やかしたり、照れたり、子どもに見せないようにしたり……。飼育員だった私としてはそんな目で交尾を見ている人たちの意識が変わってほしいと思っていました。

京都市動物園で6頭の子をもうけたキリンのオスとメスの話

これからお話しする対象となるのは当時飼育していたペア、オス「キヨミズ」と、メス「ミライ」の話です。必ずしも全てのキリンが同じ行動をするのではないことを念頭に置いて読んでください。

2012年に彼らの交尾を観察した時の話です。私がキリンの担当になった2002年に飼育していたのはキヨミズ1頭だけでしたが、2005年にミライが搬入され2頭になりました。このペアは、キヨミズが亡くなる2017年までに6頭の子をもうけました。

2007年に第1子であるオス、2009年にメス、2011年にメスの子が生まれ、第1子と第2子は他の動物園に旅立っていきました。そして2012年の交尾の時はキヨミズとミライと第3子の3頭を飼育していました。彼らにとって4頭目の子となる繁殖です。私は第1子の繁殖から見ていて、キリンの交尾はキリンならではの大変さがあると感じました。