オスとメスが1年中同居しているのは不自然で繁殖しにくい

ひと昔前は、どこの動物園でも、オスとメスがいるなら1年中同居させていましたが、本来、オスのゾウは単独で暮らし、メスは自分たちと子どもだけの母系集団を作るもの。そして、その中のメスが発情すると、それをかぎつけたオスが群れにやってきて交尾をし、交尾が終わればオスは去っていきます。

現在は、そんな野生のスタイルに近づけた飼育が推奨されています。ゾウは知能が高い動物ですから、「子どもの頃から雌雄のペアだけで育てていると、兄妹のような感覚になってしまい、そのせいで交尾しないのでは?」ということも、ずっと指摘されてきました。そして、動物園の繁殖がなかなか成功しないという現状があり、別居の方がうまくいく可能性が高いのではということで、普段は別居させています。

メスの陰部はおなか側にあり、オスは無理強いできない

発情期の同居中にうまく交尾してくれればいいのですが、メスが嫌がることもよくあります。実はメスの陰部は、他の動物よりも肛門から離れた位置にあり、ややおなか側で、股の間。よってメスがしゃがみ込んだり、交尾を嫌がって自分の後ろ足をクロスしてしまえば、オスはマウントしても陰茎を挿入することができなくなります。しかし、メスが拒否しているにもかかわらず、何度もオスに挑まれれば、さらに拒否するようになるかもしれません。

若いオスはいつでもマウントを試みますが、いくらか歳を重ね経験を積んだオスは、もしメスが受け入れ可能でなければあまり興味を示しません。しかし、オスは遊び半分で性行動をとることもあります。メスを追尾する、押しのける、肛門から糞をかき出す。または、自分を誇示したり牙で突いたりなど優位性を示す行動を取ることも。オスはたびたびメスの生殖器付近や尿をチェックするようになり、メスの発情状態をチェックしています。

通常、交尾はオスがメスの周囲をウロウロすることから始まります。このときオスのペニスは勃起してくるか、もしくは追尾している間に勃起していきます。これはメスしだいで数分間、あるいはずっと続きます。このときに交尾が成功するかは、メスが止まりじっと立っているかどうかにかかっていて、そうすることで初めてオスはメスの体に前足を掛けてマウントすることができるのです。

写真提供=名古屋市東山動植物園