小さな勝利を求めよ
わたしと同じように、あなたも自分に厳しいかもしれない。すべての問題が差し迫っていると感じているかもしれない。人生で大きなことを成し遂げたい、大胆な目標に向かって前にすすみたいと思っていて、一秒たりとも無駄にしたくないかもしれない。どれもいいことだし、大きなことを目指したいと思うのはまちがっていない。でもときどき、小さな成果をあげるよろこびを自分に許してほしい。むずかしい問題やうんざりする考えから一歩離れて、頭を休ませる必要がある。むずかしい問題やうんざりする考えがなくなることはないし、おおむね片づくこともなくて、対処されないまま残るからだ。穴はいつだって大きく、答えはなかなか見つからない。
だから、さしあたり小さな勝利を求めよう。ささやかなかたちで生産的になってもかまわないし、大きな目標と大きな夢のそばにある何かに力を入れて取り組んでもかまわない。それをわかっていてほしい。自分の意志でやり遂げられて没頭できることを、何かひとつ見つけてほしい。自分にしか直接の利益がないことでもかまわない。午後に時間を割いて、バスルームの壁紙を貼り替えたり、パンを焼いたり、ネイルアートをしたり、アクセサリーをつくったり。二時間かけて、お母さんのレシピでフライドチキンを丹念につくってもいいし、一〇時間かけて、地下室でノートルダム大聖堂のミニチュアレプリカをつくってもいい。夢中になるという贈り物を自分に許してほしい。
2009年から2017年までアメリカ合衆国ファーストレディを務める。プリンストン大学とハーバード大学ロースクールで学んだのち、シカゴの法律事務所シドリー・オースティンで弁護士としてキャリアを歩みはじめ、そこで将来の夫となるバラク・オバマと出会った。その後、シカゴ市長のオフィス、シカゴ大学、シカゴ大学病院で働く。若者が公共部門でのキャリアに備えられるよう手助けする団体(パブリック・アライズ)のシカゴ支部を立ち上げた。著書に、世界的ナンバーワン・ベストセラー『マイ・ストーリー』(集英社)。