「何でもやります」の上手な伝え方
安易に「何でもやります」とアピールすることの危険性をお伝えしてきましたが、この姿勢はどんな場合もNGというわけではありません。
例えば、創業間もないスタートアップや成長途上のベンチャー企業などの場合、当面は限られた人数で運営していく必要があるため、1人のスタッフが臨機応変に複数の業務を兼務していかなければなりません。
そうした企業では、「どんな業務にも対応する」という柔軟な姿勢を持った人は歓迎されます。
そこで、「何でもやる」という姿勢をアピールするなら、次のような伝え方をすることをお勧めします。
「私が強みとするのは○○です。○○の経験・スキルを生かし、このように貢献したいと考えています。しかし、○○業務だけに固執するつもりはありません。新しい業務や役割にもチャレンジしていきたいと考えております。必要に応じ、さまざまな業務に臨機応変に対応します」
このような伝え方であれば、採用担当者は頼りがいや安心感を抱くでしょう。
思ったまま素直に答えればいいわけではない
総じて言えるのは、面接で「思ったまま、感じたまま答えるだけではダメ」ということです。
面接担当者が「正直でいい」と思ってくれれば良いのですが、企業が一貫して注目しているのは「自社に貢献してもらえそうかどうか」です。それを念頭に置いて答えることが大切です。
そのためには、これまでもお伝えしてきた以下のポイントを心がけてください。
・受け身にならず、主体性を持つ
・自信を持つ
転職相談をお受けしていると「自分に自信がない」という方はとても多いと感じます。
しかし、そういった方の経歴や実績を聞いてみると、求人市場に精通した転職エージェントから見ると、「この経験はすばらしい」「このスキルは価値が高い」と思えることが多々あります。
自分1人で分析していても、なかなか自分の強みに気付けないと思います。他者と比較する機会がないのですから、無理もないでしょう。
昨今は転職エージェントをはじめ、「キャリアカウンセラー」「キャリアコーチ」「キャリアメンター」など、「転職」とは切り離したサービスも増えていますので、ご自身に合いそうなプロを探し、相談してみてはいかがでしょうか。
自分では「できて当たり前」「たいしたことない」と思っていた経験やスキルが、実は市場で評価される強みであると気付けることもあります。
プロに相談するのはハードルが高い……と感じるなら、これまで一緒に働いてきた上司や同僚に「私の強みはどこだと思いますか?」と聞いてみる手もあります。
自分では想定していなかった答えが返ってきて、意識していなかった自分の強みを発見できるかもしれません。
構成=青木典子
1970年生まれ。93年リクルート人材センター(現リクルート)入社。2017年morich設立、CxOレイヤーの採用支援を中心に、企業の課題解決に向けたソリューションを幅広く提案。NPO理事や社外取締役・顧問等も務め、パラレルキャリアを体現した多様な働き方を実践。NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」出演。日経オンライン等のWeb連載のほか『本気の転職』等著書多数。2022年2月、日経新聞夕刊「人間発見」の連載にも取り上げられる。二男の母。