危険な兆候

恋愛シーンにおいては、いまも若者の多くが、男性に「男らしさ」を、女性に「女らしさ」を求めます。それなのに、結婚をイメージする場面では真逆で、男性は未来の妻に「経済力」を、女性は未来の夫に「家事・育児力」を求めていることになります。

牛窪恵『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)
牛窪恵『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)

つまり、恋愛と結婚のニーズは180度違うと言ってもよく、これだけを見ても「恋愛→結婚」の流れに歪みが生じているのが分かります。若者たちは(無意識かもしれませんが)、その矛盾に気づき始めたからこそ、「恋愛と結婚は別」だと言うのでしょう。

もはや、この状況を放置し続けるだけの、時間的猶予はありません。

なぜなら「恋愛は面倒」だとする彼らの多くが、恋愛のみならず結婚までも「面倒」だと感じ始めているからです。多くは語りませんが、’10年までは未婚の男女(18~34歳)で、1割に満たなかった「一生結婚するつもりはない」の回答が、’21年には男性で17.3%、女性で14.6%にまで増え(図表5)、逆に「いずれ結婚するつもり」の回答が、男女とも6年前(’15年)より、5%前後減ってしまいました(「第16回出生動向基本調査」)。

ここまで顕著な減少は、過去に例がありません。まさに今後数年で、少子化どころか「未婚化」にも再び拍車がかかる危険性を孕んでいるのです。

【図表5】未婚者の「一生結婚するつもりはない」の回答割合
出所=『恋愛結婚の終焉
牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター、世代・トレンド評論家、インフィニティ代表

立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。