別班を指揮しているのは政府や外務省、もしくは…

話題を少し軟らかくするために「別班の本部に行ったことはあるか」と尋ねると、「ないない。(本部は)何回も移転しているからなあ」と笑いながら話したが、一方で「石井さんもいろいろ面白い記事を書いているけど、情報が出ると、情報の出所はけっこうわかってしまうよ」とブラフめいたことも口にした。

別班が陸上幕僚長の指揮下でないなら、いったい誰が指揮していたのか。

運用支援・情報部長か、それとも、その下の情報課長、地域情報班長なのか。

「そうじゃないんだ。もっと違うもの。政府とか内調(内閣情報調査室)とか外務省とか……」

なんとも中途半端な回答だった。時間も相当経過していたため、残念なことに最終的にこの場では詰め切れなかった。だが、Bが最後に継ぎたかった言葉は、「米軍」ではなかったか――私はそう想像した。

何しろ別班は、米軍が自衛隊の情報工作員を養成する目的で始まった、軍事情報特別訓練(MIST)を母体に創設された秘密組織だ。1975年、日本共産党は別班長の内島が週5日、米軍キャンプ座間に通勤していることを確認している。その誕生から、米軍が別班を育成してきたとも言えるのだ。未だにその関係が継続していても不思議ではない。

この日の取材で、いくつか残った疑問については、再度取材させてもらえばいい、と軽く考えていたが、現時点に至るまで再取材の機会はやってきていない。

「特定秘密保護法案の通過前に」とタイムリミットに焦る

そしてついに、別班取材の成否を決する日がやってきた。2013年4月16日の衆議院予算委員会で、安倍晋三首相は情報漏洩を防ぐため、罰則規定を盛り込む「特定秘密保全法」の整備に意欲を示し、「法案を速やかに取りまとめ、国会提出できるように努力したい」と述べていた。

加えて、政府は日本版NSC(国家安全保障会議)設置に向け、国の機密情報を流出させた国家公務員への罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案を秋の臨時国会に提出する方向で調整に入ろうとしていた。法案成立への流れは急速に激しさを増している。もう余裕はない――。

同年7月16日、情報本部長経験者のFと対峙たいじした。以前、別班についてただした時には、別班が現在も存在することだけでなく、別班、現地情報隊と特殊作戦群の一体運用構想についても認めていたが、肝心の別班の海外展開については回答を得られなかった。そのリベンジを果たすべく、意気込んで取材に臨んだ。

空港の動く歩道を歩く人
写真=iStock.com/allensima
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