当初の意気込とは裏腹に…
転職した当初はアメリカ現地法人のECのプロジェクトリーダーに就任。
新卒プロパー社員の多い日清食品で、外資系ITからのキャリア採用組は当時ほとんどいなかった。“意見を言わないのなら会議に参加している意味がない”という前職の企業文化もあってか、臆することなく発言する佐藤さんは、最初異分子のように見られたところもあったそう。
「日清食品の会議はどちらかというと上席者が発言し、それを部下が聞いて勉強している感じでした。その中で私はズバズバとまではいかないけれど、自分の意見を結構言っていたところ、“少し変わった人”と捉えられていたみたいです」
とはいえ、ゴリゴリの外資体質ではなく、柔軟性のある佐藤さんは、徐々に社風になじみ、頭角を現していく。
その後、安藤徳隆社長直々に日本国内で展開する新たなEC事業のリーダーに抜擢された。
佐藤さんは前述のとおり「世界的なネット大手通販サイトなみのサービスを!」と気合十分だったが、人生はそうそう甘くない。
「従来のケース買いではなく、お客様の欲しい即席麺を1個ずつ、しかもすぐに届けられればベスト。でも、そのシステムをつくるには時間もコストもかかりすぎると思い込んでいたのです。そこであらかじめ即席麺の詰め合わせセットを用意して売ればいいと考え、タッグを組める配送業者さんやパートナー企業さんを探し、自分では最善のプランを練り上げました。そして満を持して社長にプレゼンしたのです」
社長には見透かされていた、低いハードル
しかし、返ってきた社長の言葉は「できることを積み上げていってはダメだ!」というもの。提案は一蹴された。
本来ならば、ユーザーが好きな麺を1個から買えるシステムが理想形なはず。どうしてそれを目標にしないのか。そこから逆算して、できることとできないことを考えるべきではないのかというのが社長の考えだった。
「手を抜いたつもりはありませんでしたが、社長の言うとおり、できることにしか目がいってなかったのです。そもそも低いハードルの目標だった。社長にはそれを見透かされていたわけで、本当にショックでした……」
そこから佐藤さんはアプローチを変えた。ユーザーの欲しい商品を欲しい数だけ買うシステムを構築するために、再度配送業者やパートナー企業と交渉したところ、結果的には詰め合わせセットと変わらない時間(即日配送も可能)とコストでの販売が実現できた。目標を最大の理想形において、そこから逆算するプロセスは、以来佐藤さんの仕事の基本となる。