「出社してもいい日」と「リモートワークの日」だけがある

「INNOVA初台」で社員の臼井拓哉(仮名)さんから話を聞くことができた。臼井さんは過去に2回転職を経験しており、前の会社は2020年に退職し、その後コロナの影響で就職活動がうまくいかない時期もあったが2022年4月、同社に入社した。

その日の業務内容に応じてレイアウト変更が可能なオフィス家具を活用している。
画像提供=デジタルハーツプラス
その日の業務内容に応じてレイアウト変更が可能なオフィス家具を活用している

身体的な疲れやすさや姿勢維持から来る痛み、それらによるストレスという困難性を抱えているという。

「前の会社ではシステムエンジニアとしてソフトウェアのセットアップや保守、開発などを行っていました。当時は業務の範囲が曖昧で、『保守』として対応するのに疑問を感じるような業務もありました。とにかく納期に追われる毎日で、自分の能力にも体調にも限界を感じました。会社が合併した後で新しいメンバーが増えたのですが、人が増えてもそれぞれの能力差があり、忙しい状況は変わりませんでした」

現在でも会社で長時間作業をしていると調子が悪くなると打ち明ける。

同社では社員にとっての働きやすさを模索し、現在は月・水・金曜日は「出社してもいい日」、火・木はリモートワークとしている。

一度も顔を合わさず採用した人材はチームナンバーワンの実力

「INNOVA初台」の所長で「デジタルハーツプラス」事業推進部部長の高橋潤さんによると、同社で採用された人たちでこれまで働きづらさを抱えている人は以下の3パターンに分けられたという。

①就職したが、職場の人間関係や上司の指示が理解できずメンタルに不調をきたしドロップアウトした
②就職にチャレンジしたが採用されなかった
③そもそも就職にチャレンジできずひきこもり状態にある

①~③に該当する人を同社で雇用してきた理由は、先述の通り「異能があり戦力となること」を重視しているからに他ならない。その姿勢が伝わるエピソードを高橋さんが教えてくれた。

「適応障害で入社を希望された方がいました。オンラインで採用面接を行う予定でしたが、当日になって『オンラインでは難しい』と言われたのです。顔が見えない形式であれば対応が可能とのことでしたので管理者で対応を検討し、チャットで面接を行うことにしました。暗い画面に向かって文字を打ちながらの面接は私も初めてでしたが、結果的にその方を採用しました。

面接後、採用プロセスの一貫として実施したインターンで、実際の業務と同じ作業をチームで行い、参加者に『チームの中で誰が一番貢献したか』というアンケート調査を行ったところ、その方がダントツの一位でした」

チャットの面接で入社したこの社員はその後業務実績が認められて転籍のオファーを受けグループ会社へ転籍したという。社員が「INNOVA初台」を卒業することも厭わず、キャリアアップをする支援を行っていることも特徴だ。

ただし、面接に訪れた人すべてを採用しているわけではない。「チャレンジしたいという意欲が感じられるかどうかを重視している」と高橋さんは言う。