大卒正社員に占める女性が3割に近づき、「男の論理」が退潮

少し趣は変わりますが、家庭と仕事のバランスなども大きく変化しています。その昔は、子どもの卒業式に会社を休んで出席することなど許されはしませんでしたが、今ではそれも普通になりつつあります。授業参観も、かつては会社が休みの土日にするのが当たり前でしたが、昨今では平日に自由参観できたり、給食を一緒に食べたりできるようになってきました。

そう、産業界に根付いていた男社会が、綻び始めたということに他なりません。

試みに、平成30(2018)年の大企業(従業員数1000名以上)の大卒正社員に占める女性比率を見ると、30代前半で29.7%、後半でも23.3%となっています。ちなみに同じ数字を、平成元年(1989年)で見ると、30代前半5.1%、後半2.4%でした(1989年の数字には一般職が多数含まれます。総合職に限ればさらに少ないでしょう)。

【図表】年代別に見た大卒社員に占める女性割合の変化
図表=筆者作成
※賃金構造基本統計調査(厚労省)の当該サンプル数より算出

ハーバード・ビジネス・スクールのロザベス・モス・カンター教授(社会学者)は、「ある集団でマイノリティが3割を占めるようになると、その集団は大きく変化する」と語っています。2010年代とはまさに、産業界に染み付いた「男の論理」が、退潮せざるを得ない時期だったのでしょう。

学力と経済力を持った女性は「自立」を選んだ

90年代に「お嫁さんとして生きていく」という女性のライフコースが壊れ始め、2000年代以降その速度を上げてきた様子を、いくつかのデータで示してみましょう。

まず、大企業(従業員1000名以上)の大学新卒者採用に占める女性の割合を見てみましょう。雇用動向調査(厚生労働省)でその状況を振り返ると、かつては、企業規模が大きくなるにつれて、四大卒女性の新卒採用比率が下がるという「逆相関」が見て取れました。当時、「総合職は大卒男性、一般職は短卒女性」という暗黙の了解を大企業は持っており、四大卒女性はほとんど採用されなかったことがよくわかります(図表2)。

【図表】大学新卒採用に占める女性割合
図表=筆者作成
※出典=厚生労働省「雇用動向調査」

こうして、優秀な男子学生は根こそぎ大企業が採用してしまうため、規模の小さい企業は採用がままなりません。そこで、女性を取るという形で、旧来は中小企業の方が女性採用割合が高かったのです。

それが、2000年代に入ると、四大卒女性がどんどん増え、Sランク、Aランク校卒の女性が増えていきました。そうすると、大手人気企業とて、男ばかりに絞っていたら、SAランク大学の卒業生で新卒補充ができなくなります。そこで、「ランクを下げて男性にこだわるか」「女性でも高学歴者を取るか」という苦渋の選択を迫られました。その結果、後者を選ぶ企業が徐々に増え、それが女性フロンティアを作りだすのです。

図表2を見ると2000年頃から大企業でも大学新卒者の3~4割を女性が占めるようになっていますが、この数字は、少々行き過ぎでしょう。当時はまだ一般職枠での女性採用も多々含まれていたからです。90年代の大卒女性採用の多くが一般職であり、2000~2005年当たりまではその残滓もあったと思われるので、大卒女性採用の半分弱は一般職だったのではないか、というのが私の見立てです。