6月21日、ジェンダーギャップ指数が公表された。日本は146カ国中125位であり、過去最低の順位だと報道された。立命館大学教授の筒井淳也さんは「ジェンダーギャップ指数では男女のギャップを定義できる項目のみを取り入れるため、女性のみに関わる妊産婦死亡率や未成年出生率は反映されない。そうした『指標のクセ』を理解したうえでデータを読むことが重要だ」という――。

ジェンダーギャップ指数への違和感

毎年一定の時期に発表されるジェンダーギャップ指数(global gender gap index)は、日本でもマスメディアによって一斉に報道され、日本の順位がどうなったのかが毎度のように注目を浴びる。しかしその順位のリストを実際に見た人ならば、かなり強い違和感を持つはずだ。

【図表】2023年 ジェンダーギャップ指数 国別ランキング

2023年版だと、日本の順位は146カ国中125位で、順位としては「過去最低」だったそうだ。確かに日本はジェンダー格差の点で大きな課題を抱えたままの国であり、このことは論をまたない。特に政治家に占める女性の少なさ、管理職比率の低さは特筆に値する。男性の家事や育児への参加も他の経済先進国と比べると低調だ。

ただ、どんな国をお手本にしたらいいのかをみるために上位の国を見てみると、1位〜3位はアイスランド、ノルウェイ、フィンランドと、確かにジェンダー平等が進んでいるといえる北欧諸国が占めている。

他方で7位にはニカラグア、8位にはナミビア、12位にルワンダなどのいわゆる開発途上国も上位にきている。こういった国では、しばしば女性が深刻な生活安全上のリスクや日常的差別に直面している。

どうしてこういうことになるのだろうか。これは、何も間違った測定や計算がなされているからではなく、指標自体の特性に起因する。

他の指標との比較

ジェンダー不平等に関する国間比較指標には、OECDが報告しているSIGI(Social Institutions & Gender Index)などいくつかのものがあるが、SIGIには問題が指摘できるため、ここでは国連開発計画が発表している「ジェンダー不平等指標(Gender Inequality Index、2021-2022年)」をとりあげてみよう。

図表2は、ジェンダーギャップ指数とジェンダー不平等指標のランクの関係を示したものだ。本来は数値(スコア)で比較すべきかもしれないが、ここでは注目度が高いランクでみる。

【図表】ジェンダーギャップ指数とジェンダー不平等指標のランク
図表=筆者作成

ジェンダーギャップ指数とジェンダー不平等指標が連動していない国が数多くあることがひと目でわかる。その典型が日本であり、さらにはルワンダやニカラグアである。

日本:ジェンダーギャップ指数では125位→ジェンダー不平等指標では22位。
ニカラグア:ジェンダーギャップ指数では7位→ジェンダー不平等指標では102位。
ルワンダ:ジェンダーギャップ指数では12位→ジェンダー不平等指標では93位。

ジェンダーギャップ指数もジェンダー不平等指標も同じジェンダー不平等に関する指標であるはずだが、これほどの違いが生じるのはなぜだろうか。簡単に言えば、「指標というのはそもそもそういうものだ」「指標の設定には、専門家の(多かれ少なかれ恣意しい的な)判断が入り込みやすい」ということになるが、どちらかといえばジェンダーギャップ指数の設定における「クセの強さ」に起因するところが大きい。