ジェンダーギャップ指数ばかりが報道される問題
さまざまなジェンダー格差や差別の指標があるなかで、ジェンダー不平等指標といった、女性にとってより深刻な差別の実態を拾い上げるものではなく、あえて日本の順位が低く出やすいジェンダーギャップ指数にばかり報道が偏る状態が続けば、保守派からは「どうせ何らかの意図があってそうしているのだろう」と勘繰られてしまい、届いてほしい層に逆に響かなくなる、という皮肉な結果になりかねない。そうなると無用な対立が煽られるだけで、問題解決に結びつかない可能性さえある。
指標は、複雑な状態をシンプルに表現してくれる便利な数字だが、それだけに「取扱い注意」な数字でもある。数字が不毛な対立や議論の迷走を引き起こすこともあることに、私たちは十分注意を払う必要がある。
ジェンダー不平等に関して私たちにできることは多い。すでに触れたように、日本でも管理職比率や政治参加においてはジェンダー格差が深刻である。働き方や政治活動のあり方を見直す余地はきわめて大きい。さらに、開発途上国における深刻な女性差別の実態が問題だと感じるならば、ぜひ関連する支援団体への寄付も検討してほしい。
1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)などがある。